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ビル・ゲイツ会長「次の10年が楽しみ」・CES最後の基調講演

米コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)の名物、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長による基調講演も今年が最後。マイクロソフトを引退する同氏を最後に見ようと、会場には約3時間前から長蛇の列ができた。8年連続でキックオフスピーチを務めてきたゲイツ会長は、CESで通算11回のキーノートスピーチを行っている。業界のリーダーとして、またビジョナリストとして情報通信業界の行方と夢を語ってきた。最後の講演は「The Next Digital Decade(これから10年のデジタル世界)」と題して行われた


■パロディービデオ「ゲイツ氏の最後の1日」

 ウィンドズ98以降になるのかな。過去10年にわたるデジタル時代は、本当に大成功したといえるだろう──。そんな切り出しで講演は始まった。

 携帯電話は世界人口の50%に達するほど普及し、カメラはデジタル一色に染まった。僕は10年前にオートPC(車載コンピュータ)やタブレットPCの出現を予言したが、こうして10年経ってみると、すべて現実のものになっている。これらデジタル家電の成功は、本当にソフトウエアの力によるのだよ───と、ゲイツ会長はいつものように虚空を見つめながら淡々とスピーチを展開する。

 しかし、この10年はデジタル社会のほんの始まりにすぎない。これから、もっともっと広がってゆく。では、どんな世界がやってくるのか。その話を始める前に、これが僕の最後のキーノートスピーチになる。これからはボランディアで慈善活動に専念する。そこで僕が会社を辞める最後の日はどんなだろうかと考えたんだが、こんなビデオをつくってみたので見て欲しい───と恒例のビデオ上映に移った。

 例年公開されるマイクロソフトのパロディービデオは、ゲイツ会長やバルマーCEOを中心に、様々なテーマで面白おかしく制作される。今回はゲイツ会長「最後の1日」と題して、朝、車で出社する場面から始まり、バルマーCEOを筆頭にマイクロソフトのトップエグゼクティブが続々と登場して会長のエピソードを語る。仕事がなくなり、時間をどう使おうかと悩むゲイツ会長は、トレーニングジムに通ったり、知人に電話してヒップ・ホップのレコード制作に挑戦したり、映画俳優への転身を狙うなどドタバタ場面が続く。ビデオには、スピルバーグ監督やアル・ゴア元副大統領、ヒラリー・クリントン上院議員などが次々と登場し会場を沸かせた。

 ビデオの上映が終わると観客はひときわ大きな拍手を浴びせるが、ゲイツ会長ははにかむような仕草とともに、「まあ、グレック・マンデーやジョン・オージーがしっかりやってくれるだろうから大丈夫」と言葉少なに引退の感想を述べるにとどまった。


■これから10年のキーポイント



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次の10年などについて語るゲイツ会長=6日、米ラスベガス〔ロイター〕


 こうして引退話に触れたあと、ゲイツ会長は「これから10年は『Connected Experiences(つながりの経験)』の時代になるだろう。そこには3つの重要なポイントがある」と後半の話に入った。

 最初のポイントは「HD Experience」で、ゲームやテレビ、パソコンなど様々なデバイスを使い、どこにいてもこれまでにない高い画質で迫力ある映像・音声を楽しめるという。また、3Dを使ったインターフェースが普及し、3D会議や3Dショッピングを人々が利用するようになるだろうと予測した。

 第2のポイントは、常時接続を超えて、ネットでつながりを見いだす社会の実現だ。ネットワークを通じてコンテンツやサービスを苦労なしに楽しむ技術が確立され、情報(写真やビデオ)を自由に享有できるようになる。また、様々な思い出はデジタル情報として記録されていくようになるだろうと、ゲイツ会長は述べた。

 第3のポイントは「ユーザー・インターフェースの多様化」で、これからのデジタル社会では従来のキーボードにマウスという制約から人々が解放される。タッチスクリーンや音声などシンプルで直感的な操作がデジタル機器にこそ求められており、それを実現できるのが(マイクロソフトの)ソフトウエア技術だと強調した。

 ゲイツ会長は「これからの10年は本当に楽しみな時代となる」という言葉でこの話を締めくくり、スピーチは製品のデモンストレーションに移った。




■ホームネットワーク時代の製品・サービス紹介

 最初の製品デモでは、ウィンドウズ・ライブ、ウィンドウズ・モバイルなどマイクロソフトが力を入れているネットサービスや商品を紹介し、続いて同社の戦略ツールである「シルバーライト」を取り上げた。このツールは一見、ウィンドウズ・メディア・プレーヤーのような映像再生ソフトに見えるが、実はウェブサービス時代の映像・音声サービス環境を実現する役割を担っている。今回は、米4大TV局のひとつNBCと提携し、同局がウェブを使って北京オリンピックのビデオ映像を提供する際、シルバーライトを活用している事例を紹介した。

 その後、ゲーム分野ではXBoxコンソールの累積出荷数が1770万台に達したこと、XBox Liveがメンバー数1000万に達し、ゲームだけでなく大手テレビ局や映画スタジオと提携して映像コンテンツの配信にも力を入れていること、さらにIPTVミドルウエアの「メディア・ルーム」のユーザー(テレビ台数)が100万に達したなどの実績を次々に披露。英BTがXBoxをIPTVのセット・トップ・ボックスとして利用している事例なども紹介した。

 アップルのiPod/iTunesの対抗商品として力を入れている「Zune(ズーン)」では、新サービスとして「Zune Social」を公開した。これはウェブ上に構築したマイクロソフトのSNSサービスとZune端末を連携させる。

 また携帯OSのウィンドウズ・モバイルでは、Tellmeによるロケーション・ベースド・サービスのデモを行った。Tellmeはマイクロソフトが以前買収したボイス・ポータル・ベンチャーで、携帯電話のGPS(全地球測位システム)と連動して周りの映画館やレストランなどを紹介するサービスで、モバイル広告市場の開拓を担っている。デモでは、携帯電話でTellmeを音声操作し、近くの映画館を探してチケットを購入、友人に電子メールで送付するストーリーが展開された。

 こうした一連の製品デモが終わるとステージの袖からビル・ゲイツ会長が再び登場した。最後は、マイクロソフトが研究する未来技術としてデジタル・サーフェース技術と映像認識技術を説明した。

 デジタル・サーフェースは、普通のテーブルをタッチパネルのような双方向操作スクリーンにできるテクノロジーで、今回はゲイツ会長がスノーボードのタイプや模様、自分の署名などを加えながらカスタマイズして購入するeコマース仕立ての内容だった。また、画像認識技術は、ビデオカメラでホテルなどの建物を撮すと、自動的にホテル名や過去の出来事などを文字で表示するという先端テクノロジーだった。








 意外だったのは、最後の基調講演でありながら特別な締めくくりの言葉がなかったことだ。最後は、XBoxのギターゲーム「ギター・ヒーロー3」のチャンピオンとスラッシュ(ヴェルヴェット・リヴォルヴァーのギタリスト)が舞台に登場し、派手なギターソロとともに終わった。

 会場に詰めかけた観客はビル・ゲイツ会長の言葉に胸を熱くし、盛大な拍手で終わりたかったに違いない。ところが、講演はあっけなく終わり、集まった人々は拍子抜けしたのではないか。が、それもソフトウエアの天才ビル・ゲイツ氏らしいシンプルな幕切れといえるのかもしれない
(2008.1.7/日本経済新聞)

by fbitnews2006-6 | 2008-01-08 05:51 | インターネット総合  

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