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<携帯電話>「1円」「0円」端末、「販売奨励金」に秘密が




 「1円」や「0円」で売られる格安携帯電話。1台数万円するはずの端末をただ同然で買えるのは、携帯電話会社が「販売奨励金」と呼ばれる多額のリベートを販売会社に支払っているためだ。だが、この「販売奨励金」は、携帯電話の利用者が払った通信料金で賄われている。多くの人たちが支払った通話料金の一部が、一部の人の端末の代金に「流用」されている格安携帯電話の仕組みは、不透明、不公平に見えるが、現状をすぐに変えるのは難しい。【小島昇、工藤昭久】
 ◇販売奨励金は販売会社へのリベート
 1年のうちで携帯電話が最も売れる春の新入学商戦が終わったばかりの大型連休。東京・有楽町のビックカメラ有楽町店の携帯電話売り場には、「1円」や「0円」の張り紙が目立つ。同店の大木康弘主任は「旧型を中心にNTTドコモでは2割、au(KDDI)では8割以上の機種を1円で販売しています。お客さんは、1万円の端末でも高すぎると感じています」と言う。「格安携帯電話がなくなれば、携帯電話の新規契約の販売件数は20%減る」恐れもあるという。
 希望小売価格が4万円以上もする端末を、「1円」や「0円」で販売できる秘密は、携帯電話会社が販売会社に支払う「販売奨励金」にある。
 例えば、KDDIの07年3月期決算から分析すると、同社は1台当たり3万7000円の販売奨励金を払っている。このため、販売会社は「1円」で端末を売っても赤字にはならない。こんな販売奨励金の総額は5680億円にもなる。KDDIの利益で賄える規模ではなく、当然のように通信料金の一部に組み込まれて利用者から広く回収されている。
 その額は毎月1500円程度に達するとの推定もある。利用者が支払う通信料金の約4分の1の水準だ。KDDIだけではなく、NTTドコモもソフトバンクモバイルも程度の差こそあれ、格安携帯電話の助けを借りて契約数を確保している。
 ◇通話料金の一部を第三者の端末代金に「流用」

 格安携帯電話の仕組みには、消費者が端末を安く買える大きなメリットがある。しかし、支払った通話料金の一部が第三者の端末の代金に「流用」されるのは、不透明だ。同じ端末を大事に長期間使う利用者が、割高な通話料を払い続けなければならない不公平さもある。そもそも、多額の販売奨励金を賄うために、通信料金が高くなっていることは、日本経済全体にも悪影響を与える。
 しかし、格安携帯電話を支える販売奨励金にメスを入れることに、携帯電話会社や端末を製造する電機メーカーは反発する。携帯電話各社は「1円や0円に慣れた消費者は、何万円も出して端末を買ってくれない」と考える。端末のメーカーでつくる情報通信ネットワーク産業協会も「端末の実売価格が高騰すれば、買い替え需要が冷え込む」と主張する。国内で年間4500万台も売れる端末の売れ行きが鈍れば、携帯電話会社や電機メーカーの経営を直撃するだけではない。端末の買い替えサイクルが長期化すると、地上デジタル放送「ワンセグ」など新サービスの普及も鈍化する可能性がある。
 とはいえ、総務省が設置した懇談会も昨年、「販売奨励金の廃止検討」を打ち出した。総務省は今年に入ってからも、有識者を集めた「モバイルビジネス研究会」で販売奨励金問題について継続して議論しているが、是正の具体的な道筋はまだ決まっていない。
 ◇格安端末は英、仏、独、伊、米でも
 携帯電話の端末が格安で買えるのは、日本に限ったことでない。英国では、ほとんどの場合、12~18カ月の通信契約を結べば「0円」で端末を入手できる。仏や独、伊、米などでも、高額な通信料金プランで1、2年間継続利用を契約すれば、端末が安く買えるのが一般的だ。
 野村総合研究所の北俊一上級コンサルタントによると、携帯電話会社が販売会社に支払う「販売奨励金」を原資に端末の代金を安くする方法は欧米でも広がり、日本に近い状況だという。通信料金の中に端末料金が含まれるゆがみは海外でも表れているが、政府が「販売奨励金」を規制しているのは、世界最大の携帯端末メーカーのノキアがあるフィンランドなど少数の国だけだ。そのフィンランドも05年に、最新式の第3世代の端末については普及促進を理由に規制を解除した。いったんは03年に販売奨励金を禁止した韓国も徐々に規制を緩和し、来年3月からは完全自由化する方針だ。
 ◇改善には時間かかりそう
 総務省モバイル研究会の座長、斉藤忠夫東大名誉教授は「日本では、販売奨励金を使って高機能な端末を安く売ってもいいが、奨励金のない端末で通信料金が安いモデルも、消費者が選択できるようにすべきだ。固定電話のように、通信サービスと端末の販売は切り離すのが原則だ」と指摘する。端末の代金が通信料金に含まれていることで、消費者が各社の通信料金の水準を比較することさえ難しい現状を変えようとする考えだ。
 モバイル研究会の論議を経て、総務省は、端末の代金と通信料金を明確に分離して消費者に料金を示すことを携帯各社に義務付ける方針を打ち出すとみられる。販売奨励金を直接規制しなくても、端末の代金が通信料に上乗せされている実態が消費者に分かるようになれば、携帯各社が「端末の代金は高いが、通話料金は安い」といった新プランを出すなどして、新しい料金競争が起こると見ているからだ。ただ、携帯電話販売が正常化されるには、時間がかかるのは必至だ。
(2007.5.5/毎日新聞)

by fbitnews2006-6 | 2007-05-05 08:26 | 周辺機器  

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