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「水道の蛇口のように音楽を」──Napsterが定額制で目指すもの


 「水道の蛇口のように音楽を聴ける、それがNapster」──発表会で流れたビデオは、新サービスの特徴をこう説明した。月額1280円からの定額で、約150万曲が聴き放題になるNapster。「まったく新しい音楽体験を提供し、新しい音楽ファンをどんどん生み出していく」と意気込む。かつてレコード会社を震かんさせたP2Pネットワークと同名の新サービスは、低迷を嘆く日本の音楽業界の刺激になるか。

 都内で開かれた発表会で、ナップスタージャパン社長を兼任するタワーレコードの伏谷博之社長は「昨秋の会社設立から1年間準備してきたサービスが午後10時から始まる」と晴れやかな表情で宣言した。

 当初は春にはスタートする計画だったが、「見積もりが甘かった。初の定額制サービスということもあり、レーベルや権利者との話し合いに時間をかけた」と半年遅れでスタートにこぎ着けた。

 サービス普及に当たっては、音楽ソフト国内小売り最大手のタワーレコードを活用する。全国の主要17店舗で体験コーナーを開設。東京・渋谷や神戸などの大型4店舗では、5~7台のPCや携帯プレーヤーで自由に体験できるラウンジを常設する。また全店で、CDなどの購入客先着150万人に、2週間無料で新サービスを体験できるIDが入ったしおりを配布する。

 コンテンツ面でも連携。アーティストインタビューや新旧譜の紹介などでは、読み物フリーマガジン「bounce」や、店員による手書きのレコメンドが盛んな店頭の情報なども取り入れ、最新の情報を配信していく。

 「タワーレコードと言えば小売りだが、音楽とユーザーを出合わせていきたいという思いでやっている」(伏谷社長)。タワーレコードの基本は「No Music,No Life」。「パッケージ販売vs.ネット配信」という図式で捉えられがちだが、同社は店頭、ECサイト、Napsterという3つのチャネルをそれぞれ活用してもらいたい考え。伏谷社長は「ユーザーの音楽ライフをさらに楽しくしたい。次の世代に音楽の楽しさも伝えていきたい。そのためにも、イノベーションによる新市場の創出に挑戦していきたい」と語った。

 定額制で利用可能なのは約150万曲だが、うち148万曲は洋楽。邦楽は2万曲に過ぎない。伏谷社長は「配信各社と比べても見劣りしない曲数。各レーベルには前向きに検討してもらい、現時点ではMAXの曲数を提供してもらえた」と話す。「これから増えるのでご心配なく」とも。

 日本市場にPC向け音楽配信を浸透させるのに貢献したiTunes Storeに対しては「モデルが違うので直接的にライバルという意識はない。かっこよく言えば『孤高の挑戦』だ」としつつ、「パッケージ販売と比べると配信市場はまだまだ小さい。どこと競うという意識はない」という立場だ。

●Napsterの今昔

 「Napster」。1999年、「MP3ファイルへのリンクがすぐに切れる」ことに腹を立てた米国の17歳の学生が開発した音楽ファイル共有ソフトとネットワークの名前だ。ユーザーは日本を含む世界中で急速に拡大し、最盛期には4000万人に達した。

 だが、やり取りされる9割以上のファイルが著作権を無視した違法なものだったとされる。このため米国レコード業界から訴訟による十字砲火を浴び、ネットワークは停止。紆余曲折を経て、合法的な定額制音楽配信サービスのブランド名として2003年に“復活”した。現在は米国、カナダ、英国で展開し、50万人以上の会員を抱えるまでになった。

 Napsterの日本サービスは、米Napsterにとって初の現地合弁による展開となる。米Napsterのブラッド・デューイ社長は「日本は独特な市場であり、独自のアプローチが必要。専門性やマーケティング能力、レーベルとの関係を持つタワーレコードと組んでサービスを立ち上げた」と説明する。

 デューイ社長は「日本の消費者は世界の先端を行くトレンドセッター。特に家電と携帯電話で顕著だ」と指摘。スウェーデンのEricssonと組んで「Napster Mobile」サービスも発表しており、「携帯電話モデルは世界中で利用されるだろう」とNTTドコモとの協力関係に期待していた。

(2006.1ITmediaニュース)

by fbitnews2006-6 | 2006-10-04 15:09 | インターネット総合  

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