いよいよ上陸したEeePC、日本のPC需要を喚起できるか

 ASUSが「モバイルインターネットデバイス」と位置づける「Eee PC」が、国内でも発売となった。

 販売価格は4万9800円。全国約500店舗の量販店、パソコン専門店などが取り扱う。

 Eee PC日本上陸の衝撃は、どれほどのものになるのだろうか。


■台湾では女性の購入比率が65%に

 ASUSは2007年10月から、台湾、香港、北米、欧州などでEee PCを販売している。年末までの3カ月で、すでに35万台の出荷実績があるという。

 主なターゲットとしているのは、これまでパソコンを利用したことがないユーザー。同社は「既存のノートパソコンではカバーできなかった顧客層を顕在化させる製品になる」と意気込む。

 具体的なターゲットは、10歳以上の子供、主婦、高齢者だ。

 アスース・ジャパン マーケティングチームの佐藤秀樹マーケティングマネージャーは、「台湾での購入傾向を分析すると、購入者の実に65%が女性。そのうち30~39歳が36%、40~49歳が同じく36%を占める」と、女性の購入比率が高いことを示す。年齢層と掛け合わせると、主婦の購入が多いと推測できる。

 ASUSは、台湾ではシェアトップのノートパソコンメーカーとして認知度が高く、日本におけるASUS製品の購入者がパワーユーザー中心であるのとは大きく異なる。だが、その台湾でも、女性の購入比率がこれだけ高く、さらに40代の購入比率が3分の1以上を占めるというのはやはり異例だ。

 アスース・ジャパンでコンシューマプロダクト担当アカウントマネージャーを務める謝青陵氏が「ASUSが、EeePCで狙った顧客層に確実にミートしている証し」と語るのも、これだけ女性、特に主婦の購入比率が高いからだ。

 台湾の社員からは「友人のお母さんが使い始めた」といった声が上がっているという。


■EeePCの3つのEの意味

 EeePCの3つのEには、「Easy to Learn」、「Easy to Work」、「Easy to Play」の意味がある。

 今回の日本上陸に合わせて用意したキャッチフレーズは、「学ぶ、働く、遊ぶ。どれもかんたん、おてがるに」。まさにEeePCのネーミングに則ったものだ。

 アスース・ジャパンでノートパソコンマーケティングマネージャーに就く雛形剛氏は「操作が難しい、価格が高い、持ち運びが重たい、設置場所を取るといった理由で、パソコンを購入しなかった層がある。Eee PCは、こうした層に訴求できる製品」と語る。

 台湾や北米では、Linux搭載モデルを用意した。Linuxが大きなアイコンを画面に表示するため、パソコンを初めて使うユーザーでも操作しやすい。日本では、WindowsXP搭載モデルだけを販売する。「大きなアイコン」の恩恵は受けられないが、ネットやメールに機能を絞り込むことで使いやすさを訴求する考えだ。

 EeePCの外形寸法は幅225mm×奥行き164mm×高さ22mm、最厚部でも37mm。重量は、女性でも片手で持てる920g。設置スペースを取らず邪魔にならない。持ち運びや移動も容易だ。

 謝アカウントマネージャーは「ASUSの経営トップが、これまでパソコンを買わなかった人のことを考え、どうすれば使ってもらえるのか、といった点から、ユーザーの視点に立ち自ら商品企画した。これまでのパソコンが抱えていたパソコンの課題を、いくつも解決していいる」と言う。機能を絞り込んだことや、本体サイズを小型化したのは、そうした観点からだという。


■ノートパソコンとは一線を画す「モバイルインターネットデバイス」

 ただ、仕様を見ると、どうしても見劣りする点は否めない。

 Core 2 DuoおよびWindows Vistaが全盛の中で、CPUはCeleron相当。OSには、WindowsXP Home Edition(SP2)を採用している。4GBのSSD(ソリッド・ステート・ディスク)を搭載。日本では、特別キャンペーンとして4GBのSDHCメモリーカードを付属するが、それでも合計8GBという容量は、一般的なノートパソコンに比べると圧倒的に少ない。

 さらに、ディスプレイは800×480ドットの7インチTFT液晶パネル。メモリーは512Mバイト。比較表をつくると×ばかりがつくことになる。

 これに対して謝アカウントマネージャーは、「専門家やパソコンに詳しいユーザーは、仕様で比較しようとする。しかし、EeePCは、ノートパソコンとは異なる新たな用途を提案するもの。ノートパソコンと比較すること自体に問題がある」と反論する。

 ASUSはEeePCを、「モバイルインターネットデバイス」という新たなカテゴリーと位置づける。

 「むしろ、ノートPCと比較しない方が、EeePCのメリットを知っていただけると思う」(謝アカウントマネージャー)

 内蔵しているIEEE 802.11b/gの無線LAN機能を利用して、オフィスや外出先で、インターネットに接続。Webサイトを閲覧したり、メールをやりとりしたり、ブログに書き込んだりといった使い方を想定している。このほか、無償提供されているオフィススイートをダウンロードし、それをモバイル環境で利用することもできる。

 日本では、発売に合わせてNTTブロードバンドプラットフォーム(NTT BP)との提携を発表。NTT BPが提供する全国700カ所、1600のアクセスポイントを持つ無線LANサービス「Wi-Fine」を、無料で利用できるサービスを用意した。今年5月末までの期間限定ながら、1日1回接続であれば時間制限なしで利用できる。

 これもモバイルインターネットデバイスという新たなコンセプトの普及を加速するための施策だ。

 「ゲーム専用機ならばWii、MP3プレーヤーならばiPodがあるように、モバイルインターネットデバイスならばEee PCと呼ばれるようにしたい」というのが、ASUSの目指すゴールだ。

 アスース・ジャパンが掲げる目標は、今後1年間に60万台の出荷と意欲的だ。謝アカウントマネージャーは「発売当初は月間1万台~1万5000台程度しか用意できない。今の引き合いから見れば品薄となる。早い段階で、月間3万台~5万台の供給体制を確立したい」とする。


■販売店を45店舗から500店舗に拡大

 EeePCの発売に合わせて、国内販売体制も強化した。

 現在、ASUS製品を取り扱っている販売店は、約45店舗。いずれもパワーユーザーが訪れる専門店が中心だ。これを、500~600店舗に拡大。全国規模に販路を広げることに成功した。

 佐藤マーケティングマネージャーは「まだ、具体的な施策を開始しているわけではない。だが、量販店店頭で、毎週定期的にタッチアンドトライ(本誌注:実機を展示して実際に触ってもらうこと)を実施することを検討している。商業施設や文化施設など、これまでパソコンとは関係がなかった場所でも訴求活動を行っていきたい。さらに、ノートパソコンの一形態ではなく、携帯電話やゲーム専用機の延長線上の機器としてとらえてもらうための活動も視野に入れたい」と意気込む。

 もちろん、EeePCによって、ASUSブランドを日本に定着させる狙いもある。

 佐藤マーケティングマネージャーは「ASUSの、2007年度におけるマザーボードの出荷実績は5870万台。全世界で生産されるパソコンの3分の1がASUSのマザーボードを搭載する。これだけ信頼性の高いメーカーであることを、日本においても認知してもらいたい。EeePCはそのきっかけになる」と胸を張る。


■低迷する国内パソコン市場の起爆剤になるか?

 EeePCに対する業界の注目は高い。

 中でも、低迷するコンシューマパソコン市場において、EeePCが、どれほど新たな需要を喚起できるかに注目が集まる。

 国内のパソコン市場は年間1400万台規模。過去5年間にわたってそれほど伸張していない。その要因として、携帯電話によるメール利用の普及や、中小企業のパソコン導入の遅れなどが指摘される。加えて、5万円以下の低価格パソコン市場が顕在化しなかったことを理由に挙げる関係者もいる。

 その点でも、EeePCの取り組みが、国内のパソコン市場の活性化につながるかどうかに注目が集まっている。

 今のところ、国内におけるEeePCの購入者を見ると、ASUSが得意とするパワーユーザーが先行しているようだ。

 新たな用途提案、カテゴリー提案を柱とするEeePCの販売戦略は、長期戦となるのは明らかだ。市場から、「主婦や子供たちがEeePCを使い始めた」という声が聞かれ始めたとき、EeePC、そしてASUSが、日本における存在感を発揮し始めたと言えるようになるだろう。

(2008.2.4/日経BPネット)
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by fbitnews2006-6 | 2008-02-04 17:57 | PC  

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