ネットでは「友人」から身を隠すのは難しい?

会ったこともない「友だち」にまで、自分が買ったDVDのタイトルを知られたくはない――。SNSにおける友だちとの距離感とプライバシー設定の関係は?

 2007年11月、人気ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)米Facebookのユーザーは、自分の友人がオンラインで購入した商品に関する最新情報を入手できるようになった。続いて12月には、Googleのニュースサービスのユーザーは、知人や友人がオンラインで目を通した記事のリストを受け取れるようになった。そして1月初め、Sears Holdingsのサイトでは、誰かの名前、電話番号、アドレスを入力するだけで、その人のSearsでの購入履歴を閲覧できるようになった。

 以上3つの事例には、共通するポイントが1つある。それは、各社とも、ユーザーが知り合いの個人的な情報にアクセスできるようにしている点だ。しかも、そうした情報共有はときには本人の知らない間に行われている。

 かつてオンラインプライバシーをめぐる議論は、Webサイトがユーザー情報を政府機関や広告主、あるいは完全な第三者とどのように共有するかという問題に焦点が絞られていた。だがここ数カ月は、新たな疑問が浮上している。友人や知り合いに、どの程度の情報までなら知られてもかまわないか、という問題だ。

 インターネットプライバシーの専門家、そして場合によってはユーザー自身も、いわゆるオンラインの「友人」との情報共有方法をもっと自分で管理できるようにしたいと考えるようになっている。それを受けて、最近ではWebサイトの側でも、ユーザーが自分のプライバシー設定を変更しやすいよう、またどの友人がどの情報を見られるようにするかを細かく設定できるよう、対策を講じるようになってきている。

 MySpaceやFacebookといった人気SNSサイトのページに倣う企業が増える中で、情報共有の問題は高まっている。そうしたSNSサイトでは、ユーザーは自分の日常生活や仕事、デート相手、週末の予定など、さまざまな情報を自分のページに記録し、「友人」リストに登録した相手とそうした情報を共有できるようになっている。この場合、「友人」という用語は、知り合いであることを示す程度の意味で使われている。そして、こうした動きが広まるにつれ、インターネット企業はそれをさらに活用する方法を模索し始めた。「もしユーザーがこうした基本的な情報の共有を望んでいるのならば、例えば、買い物や読書の習慣など、もっと詳しい情報も共有したいのでは?」との考えからだ。

 ワシントンD.C.に拠点を置くプライバシー擁護団体、電子プライバシー情報センター(EPIC)のリリー・コニー副所長は次のように語っている。「見て見て、こんなに便利なことができるようにしたよ』と考えているのだろう。だが一部の消費者からは『待って、わたしたちはこんなことを望んではいなかった』という反応が戻ってきている」

 消費者にとっては、こうしたプライバシーの問題を一度に解決するための特効薬はない。なぜなら、サイトによって情報の共有方法がそれぞれ異なるからだ。そのため、目下のところ、労を惜しまず各自が個々のサイトにアクセスして自分の設定を変更するしか、ユーザーが自分の身を守るすべはない。

 Facebookは昨年11月、ユーザーにもっと長い時間サイトに留まってもらおうと、「Beacon」と呼ばれるマーケティングプログラムを導入した。このプログラムには、オンライン小売業者のOverstockやFandangoなど数十企業が賛同し、Facebookユーザーが提携サイトのいずれかで何かを購入するたびにその情報をFacebookに通知することに合意した。そして、Facebookの側では、そうした購入情報をそのユーザーの友人に通知するサービスを始動した。

 米ノースカロライナ州チャペルヒル在住の法科学生レイチェル・ハンドリーさん(24歳)は、このプログラムを実際に体験したという。あるとき、ハンドリーさんはOverstockでワンピースを1着と靴を購入した。その際、この購入に関する通知がOverstockからFacebookに送信され、その通知を受けて、Facebookはハンドリーさんの数名の友人にその購入情報を送信したのだろう。翌日には、ハンドリーさんの友人の1人がこの「かわいいワンピース」についてコメントしたという。ハンドリーさんは、この体験について「気分が悪かった」と語っている。そして、自分の情報の共有方法をもっと自分で管理できるようにしたいと思ったという。

 そこでハンドリーさんはこの状況に対処しようとしたが、そこで問題に直面した。彼女はまずFacebookの設定ページのとあるボックスにチェックを付け、Overstockでの買い物に関しては友人に一切情報を知らせないよう意思表示をしたという。だが自分のプライバシー設定を後から確認したところ、Facebook以外のサイトでの行動について友人に知らせないようにするためには、また別のボックスもチェックする必要があることに気付いたという。
ハンドリーさんをはじめとするユーザーからの苦情を受けて、Facebookは昨年12月、プライバシーの設定方法を変更し、このプログラムから完全にオプトアウトできるようにした。それでも、激しい反発があったため、その後、Overstockはこの提携から手を引いている。ただし、そのほかの小売業者はまだ提携関係を維持している。

 カリフォルニア大学バークリー校のプライバシー担当研究員ジェニファー・キング氏は、電子メールや写真共有、SNSサイトなど、「友人」リストを作成できるようになっているサイトの利用者向けに、幾つかのプライバシー強化策を伝授している。同氏はまず、友人リストに誰かを加える際には、本当にその人物を知っている場合に限るよう、呼び掛けている。また同氏は、オンラインでメッセージや写真、個人の詳細をどのように共有するかによって、後々ばつの悪い思いをしたり、傷付いたりする可能性があることを忘れないよう、アドバイスしている。

 「パーティーに参加している皆と情報を共有するようなものだと思えば分かりやすいだろう。しかも、皆がビデオカメラを持っている」とキング氏。

 こうしたサイトで自分の情報を管理する方法について、幾つかポイントを紹介しておこう。

 Facebookの場合、まずはサイトのトップページの右上にある「プライバシー」のリンクをクリックする。そして、「プロフィール」「検索」といったリンクをクリックし、自分の情報を誰が見られるようにするかを設定する。知らない人に自分の情報を見られないようにするための確実な方法は、ここで「only my friends(友人のみ)」を選ぶことだ。ただし、詳細な情報は一部の友人にも見せたくないのであれば、「limited profile(限定プロフィール)」を利用するといい。限定された情報しか表示されない簡易版のプロフィールだ。

 ハンドリーさんのように、Facebook Beaconの機能を完全に無効にしたい場合は、プライバシーページへのリンクをクリックする。そして、「External Websites(外部のWebサイト)」をクリックし、「Don't allow any Websites to send stories to my profile(プロフィールにはどのWebサイトからも記事を送信させない)」というボックスにチェックを付ける(Facebookでは、「自分に関する最新情報」という意味で「stories」という用語が使われている)。

プライバシーの懸念に対処
 Facebookの最高プライバシー責任者(CPO)クリス・ケリー氏によると、同社はユーザーが自分の友人をグループ分けし、どの情報をどのグループに見てもらうかを細かく設定できるようにする計画という。また同氏によると、Facebookユーザーの約20%はプライバシー設定に何かしらの変更を加えているというが、Beacon機能をオプトアウトしているユーザーがどの程度かについては、同氏はコメントを拒否している。「ユーザーによって、それぞれ許容レベルは異なる。この問題を解消するための最善の方法は、どの情報が共有されるかに関する透明性を高め、共有される情報をユーザーがもっと自分で管理できるようにすることだ」と同氏。

 News Corp.傘下のMySpaceも、Facebookと同様、友人が誕生日を迎えたり、新しい写真を投稿したり、あるいは自分に関する新しい情報をプロフィールに追加したような場合に、それをユーザーに通知するようにしている。だがFacebookのBeacon機能とは異なり、MySpaceの場合、MySpace以外のサイトでの友人の活動の通知は行っていない。MySpaceには独自のプライバシー設定方法があり、その詳細については、MySpaceのトップページの右上のリンクからアクセスできるプライバシーページで説明されている。同社はプライバシーポリシーに関するコメントを断っている。

プライバシーの設定を確認
 上記の企業のほかにも、ユーザーが個人的な情報を共有できるようにしているサイトはたくさんある。例えば、HP傘下のSnapfishのような写真共有サイトや、ほかの人の読書情報を共有できるようにしているAmazonなどもそうだ。自分の個人プロフィールを改めて確認し、各サイトのプライバシーポリシーを見直しておくよう、お勧めする。

 最近では、Googleのような大手Web企業も、ユーザーが自分のオンライン活動を知人と共有するための機能を提供するようになっている。イギリスのディドコット在住の物理学の研究者ジョナサン・ロールさん(28)は昨年12月、Google Readerにログオンした際にそれに気付いたという。Google Readerは新規のニュース記事やブログ記事を追跡するサービスで、ユーザーはGoogleのサイト内からそうした記事にアクセスできる。またこのサービスでは、ボタンをクリックするだけで、特定の友人とそうした記事を共有できるようになっている。

 ロールさんは、ロジャーという名前の見知らぬ誰かが自分と記事リストを共有していることに気付いたという。Googleはそのころ、Googleのインスタントメッセージング(IM)サービス「Google Talk」での習慣を追跡することで、Google Readerユーザーの友人を推測し、そうした相手と自動的に記事を共有させる取り組みを進めていた。つまり、何かのニュース記事を友人に送信したいと思い、ロールさんが「共有」ボタンをクリックした場合、ロジャーという人物までそれを見るかもしれない、ということだ。ロールさんは現在、記事の共有機能を一切利用していないという。

 Googleの広報担当者によると、同社は現在プライバシーの管理機能を強化する方向で検討中というが、今のところ、特定の人物との共有を避ける唯一の方法は、その人物をGoogle Talkのアドレス帳から削除することだという。同社はサードパーティー企業とはデータを共有していない。

 なお、Searsの広報担当者によると、同社が購入履歴の追跡サービス(ManageMyHome.comで提供されていた)を提供したのは、Searsで購入した商品に関する有用な情報に顧客が簡単にアクセスできるようにするためだったという。だがプライバシーに関する苦情を受けて、同社は結局このサービスの提供を中止している。


(2008.2.1/ウォール・ストリート・ジャーナル)
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by fbitnews2006-6 | 2008-02-01 14:41 | インターネット総合  

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