出会い系、ネット通販、オークション・・・横行する「ネットさくら」






 1月9日、中学生の少女を騙って買春を呼びかけた出会い系サイト業者の男が、出会い系サイト規制法違反の疑いで逮捕されたと報じられた。自分が運営する有料出会い系サイトを盛り上げるために、いわゆる「さくら」行為をしたという事件である

 出会い系サイトで男が少女目当てに売春をもちかけて、捕まるというケースはちょくちょく見られる。しかし、出会い系サイト業者が「ネットさくら」行為をして逮捕されることはそれほどない。過去には、2004年6月にアクセス減に困った出会い系サイト業者が、女子中学生を騙って逮捕された事件があるくらいだ。

 出会い系サイト業者が少女を騙る「ネットさくら」だけでなく、一般人が面白がって少女を騙った場合も法令違反の対象となる。昨年11月に、面白半分で女子中学生を騙り、出会い系サイトで買春を呼びかけた男が書類送検されている。

 出会い系サービスにおける「さくら」といえば、古くはテレクラのバイトから存在した。業者が女性バイトを雇い、男性客相手に思わせぶりな会話をすることで、利用者を増やすという手口だ。それがネットの時代になっても、似たようなシステムとして存在し続けている。

 男性客とメールをするための「ネットさくら」を雇い、自分の運営する出会い系サイトを盛り上げるという行為は少なからずあるようだ。たとえば渋谷の桜丘町周辺に拠点を持つ某出会い系サイトでは、実に「女性客」の98%が「ネットさくら」だったという。「ネットさくら」のバイトのなかには、男性客から結婚指輪までせしめる強者までいたらしい。電話と違ってメールでは性別を判断する術がないから、やろうと思えば男性による「ネットさくら」も可能だ。

 出会い系サイトにかぎらず、一般に「ネットさくら」は存在する。そして、「ネットさくら」の存在は、多くのユーザーにとって不利益となる。一番わかりやすいのが、評価サイトにおける「ネットさくら」だろう。

 評価サイトや評価システムには、ユーザーによるクチコミ情報や、商品の売れ筋ランキングなどがある。「ネットさくら」は、クチコミ情報サイトで「特定商品を高評価しているユーザー」を騙り、売れ筋ランキングで「特定商品を買ったユーザー集団」を騙る。

 売れ筋ランキングにおける「ネットさくら」の実例としては、売れ筋ランキングを広告、販促ツールとして使っている通販サイトがある。この通販サイトでは、メーカーから依頼を受けて特定の商品をランキング上位に載せている。ユーザーにとって「売れ筋」というのは、大切な価値判断基準のひとつだ。しかし、その情報に作為性があれば、ユーザーは広告に過ぎないものを客観的な評価情報と誤認して、商品を購入してしまうおそれがある。

 04年2月には、オンライン書店アマゾンのカナダ版で、著者本人による「自作自演」が発覚する事件が起きた。きっかけはシステム障害によって、書評投稿者の個人情報がオープンになってしまったことだった。アマゾンで販売されている書籍の著者たちが、自分の書籍を絶賛する書評を書き込んでいたのである。

 これなどは著者が個人的にやった「ネットさくら」なので、笑い話で済まされるところがあった。しかし、クチコミ情報サイトやクチコミ情報欄が、もし広告として使われていたとしたら大問題になるだろう。いかにも役者風の「利用者の声」をカタログに掲載して商品を推奨する、古典的な販促手法と何ら変わらない。

 自作自演といえば、オークションサイトで値段をつり上げるために自作自演で入札する行為も問題とされてきた。現在は多くのオークションサイトで本人確認が強化されているので、そういった行為は発生しにくくなっているはずだが、完全に解決されたわけではない。

 ユーザーが「ネットさくら」のワナにひっかからないためには、特定の商品やサービスについて、ひとつの評価サイトだけに頼らずに、複数の評価サイトを比較検討することが重要だ。比較検討を積み重ねていくことで、価格や売れ筋についてのおおまかな「相場」もわかってくる。不当な価格や不当な評価で商品をつかまされることも、ある程度は回避できるだろう。

 また、これは当然だが、「ネットさくら」であってもホンモノであっても、出会い系サイトのようなところでの違法な書き込み、児童買春などの違法行為は厳禁である。
(2008.12.24/日本経済新聞)
[PR]

by fbitnews2006-6 | 2008-01-24 12:34 | インターネット総合  

<< 「Wiiシンドローム」を防ぐに... NEC、システム開発の標準化加... >>