魅力回復は道遠し? ITサービス業界、学生の人気が低迷






 先日読んだ週刊ビジネス誌に2009年に新社会人になる学生による就職ブランドランキングが掲載されていた。今回の第1位は、前年までのフジテレビに代わって、全日本空輸(ANA)であった。2位はJTBグループ、3位に資生堂、以下オリエンタルランド、集英社、電通、フジテレビ、講談社、三菱東京UFJ銀行、テレビ朝日と続く。いずれも大学生になじみが深い事業や商品を展開している会社だ。残念ながらITサービス関連企業は上位にいない。

 今回のランキングで目立つのは、過去3年30位圏外だった金融機関が返り咲いたことだろう。三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行が上位に食い込んでいる。また、マスコミが強いのは例年通りとしても、テレビ局のランクダウンと、一般には不況といわれている出版のランクアップが対照的だ。製造業の不人気は顕著で、トヨタといえどもベスト10には入れなかった。さらに、例年人気を集めていたITベンチャーは敬遠され、大幅にランクを落とした。

 ITサービス業界も不人気で、ランキングを集計した300社に入ったITサービス系企業が極めて少ない。このランキングのみで不人気と決め付けるわけにはいかないが、傾向は反映しているだろう。最上位でも、昨年19位まで上昇した野村総合研究所(NRI)が今年は57位。続くのはトランスコスモスで91位。私の会社、CSKホールディングスは97位だった。業界最大手のNTTデータでさえも105位だ。あとは大和総研、三菱総研など、ITサービスというジャンルで入ったかどうか不明な会社を入れても10社程度だ。

 一昨年来、情報サービス産業協会(JISA)をはじめ、業界を挙げて魅力ある産業にしようと活動しているが、なかなかこの仕事の楽しさが、学生に伝わらないようだ。仕事の中身をもっとわかりやすく伝えることが必要だと思っている。

 私の会社では、学生のために「ITサービス産業研究読本」という小冊子を作って、産業の特徴や広がり、仕事と役割などを詳しく説明している。会社説明会などに訪れた学生に配布すると、「業界の仕事が良くわかった」「認識を改めた」といった反応をもらっている。

 このような努力をしている一方、ますます逆風を吹かせた出来事もあった。昨年とある場で情報科学系の4年制専門学校生や高度IT技術者育成コースの大学院生とITサービス業界の経営者との対話集会があったときのことだ。以下のようなやり取りがあったそうだ。


学生::3Kといわれている現状の解決策をどのように考えていますか?
経営者::3Kなどと言われているが、3Kの“帰れない”は、帰りたくない人が帰れないだけ。スケジュール管理の問題だ(学生はあっけに取られる)

学生::大学でどのような専門能力を身につけてきて欲しいですか?
経営者::コミュニケーション能力に長けていると良い

学生::それで、本当にヤフーやグーグルに勝てる産業になれるのですか?専門知識は要らないのでしょうか?

 学生はがっかりした様子。このおかしな対話は、多くの就活サイトから反撃されるという失態となった。魅力を伝えるにはまだまだ道遠しの感である。

 また、IT関連ベンチャーに関する不祥事も絶えない。年末には東証マザーズ上場のIT関連企業、オーベンに関する不祥事も報道されていた。株式交換を悪用した不正取引で、ライブドア事件と同じような手口である。

 IXIなどによる架空取引、循環取引事件とは違うスタイルではあるが、IT業界のイメージをまたもやダウンさせる事件だ。こんなことが繰り返されると、業界のダーティー・イメージが増幅され、3K、5Kなどといわれる労働環境問題ともあいまって、ますます魅力を失うことになる。

 関連する事件を含めて、司直による徹底的な追及を望みたい。同時に、ややもすると「IPO(株式公開)」自体が目的化しかねないベンチャー企業を取り巻く現状に対し、IPOをねらう経営者は「公開」の意味を改めて自問すべきだろう。

 さらに起業後、間違っても「闇サイド」からのアプローチなど受けないようにしなければならない。証券会社を中心とする公開営業を行う者は、IPO主幹事の利権取得にのみ執心するのではなく、対象企業が将来にわたって公開に堪えられるものにすべく、厳しく指導体制を敷くべきだ。

 場合によっては適切な経営者のリクルートも含めての支援策が必要だ。取引所自体が上場審査をきちんとするのは当然だが、東証マザーズを筆頭に新興市場の審査には問題が多いように見受けられる。マスコミもIR、PRがうまいと、すぐ安易にスタートアップ企業を持ち上げる傾向があるが、技術や経営の中身をきちんと見極めて評価すべきだ。

 ITサービス業界も早急に、仕事の環境改善はもちろんのこと、自分たちの仕事をわかりやすく説明する責任の遂行も含めて、更なる魅力増大策をとって行くべきだと思っている。
(2008.1.22/日本経済新聞)
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by fbitnews2006-6 | 2008-01-22 16:41 | インターネット総合  

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