“守る”と“創る”は対立するのか――07年のネット界




ITmedia News アクセストップ50の記事から2007年を振り返る:「3次元仮想世界」への期待を背負って登場した「Second Life」が急速に衰退し、「ニコニコ動画」が幾多の試練に耐えて急成長し、何の前触れもなく降臨した「初音ミク」というバーチャルアイドルがネットの「創造力」を刺激する。ユーザーが創るコンテンツの拡大と、既存の著作権の枠組みとの矛盾が大きくなり、しばしば衝突も起きる――2007年のネット界をおおざっぱにまとめると、そんな感じだろうか。

【他の画像】 【表:ITmedia News 2007年人気記事トップ50(1月1日~12月26日)】

●ネットとマスメディアは“近づいた”?

 ITmedia Newsのアクセス上位50位を下にまとめた。トップはニコ動でも初音ミクでもなく「脳内メーカー」を紹介する記事。350万以上のページビューを稼ぎ出した。ブログやmixiを通じてじわじわと広がっていったこのサービスの記事には、検索サイトからのアクセスも多かった。ローゼン閣下こと麻生太郎氏も演説で言及したほど。テレビや雑誌でも頻繁に紹介され、ネットにまるで縁のない人にまで広がったことでアクセスが増えた。

 2位以下にはマスメディアとネットの“対立”が見える記事が続く。2位、3位には朝日新聞社の報道をやゆした“新語”「アサヒる」に関する記事が、4位には「アッコにおまかせ」(TBS)の「初音ミク」報道に関する記事が入った。マスメディアの報道姿勢に対してネットが大きな声をあげ、マスメディア側もそれに応えざるを得なくなる――マスメディアがネットの意思を、以前よりも強く気にするようになった1年だった。


 mixi日記やブログの“炎上”は、影響範囲を増してきた。ブログでの不適切な発言で企業が謝罪する、という事態は2005年ごろからあったが、今年は「テラ豚丼」や「INFOBAR2」騒動など、ブランドのある大企業の従業員の書き込みが“炎上”し、ネットメディアだけでなくテレビなどのマスメディアも報道する――という事態に。これを見ても、ネットとテレビは以前よりも“近づいて”きたのかもしれない。

●Second Lifeのがっかりと、ニコニコ動画のびっくり

 2006年末から話題になっていたSecond Life。ユーザーが自由に創造できる仮想世界という枠組みは新鮮で、記者は期待もしていたのだが、プレイすればするほど「がっくり感」が高まり、編集部で「これはまだまだだな……」という結論に至った。その理由は「『Second Life』“不”人気、7つの理由」、「Second Life「企業が続々参入」の舞台裏」といった記事に詳しい。将来、3次元仮想世界が当たり前に使われる日は来るかもしれないが、それは今ではなく、また、今のSecond Lifeではないだろう。

 Web2.0の狂騒も落ち着き、Second Lifeもとりあえず先延ばしとなると、ネットはいよいよ停滞するのか――編集部のあきらめムードを吹っ飛ばしてくれたのが、「ニコニコ動画」と「初音ミク」だ。ニコニコ動画はYouTube動画にコメントを付けるサービスとして1月15日にβ公開され、同24日には1日当たり200万PVを突破。YouTubeからのアクセスしゃ断を受けていったん閉鎖するという“試練”にも耐え、γ版でクローズドサービスとして復活した。

●「みんなで創る」動画

 「動画共有サービスは、YouTubeに代表されるように、テレビやDVDのコンテンツが無断アップロードされ、それをみんなで漫然と見るだけ。日本では“ユーザー発信動画”は盛り上がらない」――ニコニコ動画はそんな思い込みも打破してきた。

 「動画にコメントがもらえる」というシンプルな仕組みや匿名性が、無名の“職人”たちの創作魂に火を付け、動画職人や演奏職人などさまざまな才能を発掘。職人同士のコラボレーションも当たり前におき、見知らぬ人同士が音楽、歌、イラスト、動画をそれぞれ担当して“マッシュアップ”するということも起きた。

 動画の直下にユーザーが商品アフィリエイトを貼り付ける「ニコニコ市場」からは、動画に関連した「ネタ商品」が売れ、MADと呼ばれるマッシュアップ動画から、アイドル「Perfume」のCDが売れるなど、新しい流通の可能性も見せつけた。

●初音ミク、降臨

 そんな土壌に突如降臨した女神が「初音ミク」だ。かつてのブームは見る影もなくしぼんだアマチュアDTMが、歌うバーチャルアイドル「ボーカロイド」という姿で“復活”。Web2.0のキーワードとしてしきりにもてはやされたCGM(Consumer Generated Media)の理想型を、最も急速に、最も分かりやすく体現した。

 ニコ動との“相乗効果”で、ミクは成長していく。ミクで作った歌だけでなく、画像や動画も続々とアップされ、ネットユーザーのみんなの力で1人の「バーチャルアイドル」が育っていった。かと思うと「ミクが画像検索から消えた」という珍事も注目を集めた。「ミクを画像検索できないのは大企業の陰謀だ」なんて説まで飛び出した。

 この騒動がここまでユーザーの耳目を集めたのは、草の根ユーザーが創り出すコンテンツと、企業主導の既存のコンテンツ流通システムとの矛盾が、ユーザーの違和感として常にあったからかもしれない。

●ニコ動やミクが提起する、次の著作権の姿

 ユーザーによる創作が活気づく中「違法にアップロードされた動画や楽曲をダウンロードすることも違法にしよう」という議論が文化庁傘下の小委員会であった。今のところ「ダウンロード違法化」を推進する権利者団体の意見が、そのまま通りそうな気配だ。

 また、著作権保護期間を50年から70年に延ばそうという権利者側の意見と、「それでは自由なコンテンツ流通が妨げられる」というユーザー側の意見も激しく対立した。

 既存の著作権制度の枠組みと、一般ユーザーのネット利用やコンテンツ創作――プロによる商業ベースを前提にした「著作権」と、CGMの世界でユーザーが盛り上げる作品の「著作権」との矛盾が噴出した年だった。初音ミクを使って作られた楽曲の着うた配信をめぐる騒動も、そんな矛盾を体現していた。

 08年は07年以上に、ネット上での創作が盛り上がってくるだろう。音楽も動画もイラストも、一般ユーザーがネットで自由に発表できる環境が整ってきている。旧来の著作権の枠組みと、ユーザーの自由な創作との相克の先に、新しい何かが見えてくるかも知れない
(2007.12.29/ITmediaニュース)
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by fbitnews2006-6 | 2007-12-30 08:53 | インターネット総合  

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