3.5cmの極薄液晶テレビで暮らしはどう変わる? 開発者が語るテレビの自由




 日立製作所(日立)が12月に発売した液晶テレビ「Wooo」の「UTシリーズ」は、モニタ部の薄さ約 3.5cmを実現した世界最薄の「超薄型」液晶テレビ。モニタとチューナーを分離するなどして、「今までのテレビの概念を変える」製品として誕生した。開発の狙いや販売戦略について担当者に聴いた。



●目指すのはアトムの世界

 「Wooo UTシリーズ」開発の根底にあったのは「日本人が未来像として抱くSFの世界」だというのは、商品企画を担当した高江雅喜・コンシューマ事業グループデジタルコンシューマ事業部商品企画本部戦略部長代理。「これからのテレビはこうあるべきだ、というものをUTシリーズはもっている」と語る。

 「プラズマ、液晶と、今や薄型テレビは当たり前になりました。最近では、各社とも大画面化や高画質化にしのぎを削っています。そんな中、私たちは大画面・高画質化の次にくるものは何か、模索していました。日本人は、『鉄腕アトム』や『ドラえもん』といったSF漫画に出てくる、壁と一体化したような未来のテレビ像が究極として潜在意識にあると思うんですね。そこで、そんなテレビ像に近づくための第一歩として、さらなる薄型化という選択をしたんです」

●総合メーカーとしての日立の技術力が実現した3.5cmという薄さ

 およそ3.5cmという超薄型モニタを実現した陰には、日立グループとしての総合力があったと高江氏は強調する。「電源ユニット、部品の集積化で超薄型化を実現したというのももちろんあります。ただ、薄くするときに問題になるのは本体背面の放熱処理なんです」


 従来のテレビは、放熱ファンにより本体を冷却しているが、ファンがある分、薄くするには限界があった。そこでUTシリーズでは、背面の上下に排熱用の穴を開け、空気を循環させることで、ファンがなくても十分に熱を逃がせる仕組みをとった。これでさらなる薄型化が可能になったという。

 「日立は大型サーバーも作っていますから、そこで培った冷却技術、熱の流れの解析技術を応用しました。総合電機メーカーとしての開発力が生きた部分です」と高江氏は胸を張る。

●どこから見ても美しいデザイン

 「テレビは昔からいろんな情報の窓であり生活の中心。その窓の見た目をいかに美しくできるかがこれからのテレビにはもとめられている」と高江氏が語るように、UTシリーズは2つのコンセプトをもとにした見た目=デザインにもこだわっている。

 1つめのコンセプトは360度ビューティー。横からは薄く、背面からは美しく見せることを狙った。高江氏が「背面のネジ穴の位置1つとっても考え抜いた」と語るほど、全体のプロポーションに気を使い、積極的に背面を見せる展示も可能になったという。

 2つめのコンセプトはフレグランス(心地よい香り)。高級感、品のよさとクリアな感じを出そうと、香水をイメージしてデザインしたという。「においたつようなデザイン」(高江氏)を目指した。さらに日立の液晶テレビで初めてカラーバリエーションを取り入れ、32V型を4色で展開。個性的な存在感をかもし出すのに一役買っている。

 こうして、「薄さ」と「美しさ」の両立させたUTシリーズで同社は、テレビの新いいコンセプトを掲げる。それが「レイアウトフリー」だ。

●「レイアウトフリー」で今までのテレビの一歩先へ

 「UTシリーズで、今までのテレビの立ち位置を変えたい」と意気込む石塚規夫・コンシューマ事業グループデジタルコンシューマ事業部マーケティング本部担当部長は、「レイアウトフリー」のコンセプトをこう説明する。

 「今までのテレビは、壁際に置くくらいしか選択肢がなくて、一旦設置すれば動かさない。それを壁に掛けたり、ちょっと位置を変えて部屋の真ん中に置けたりということで、設置場所や視聴スタイルがフリーになる、というのがUTシリーズのコンセプト『レイアウトフリー』なんです」

 「レイアウトなんて、今までテレビでは用いなかった言葉ですが、あえて使いました。今までのテレビの概念になかった部分を追求して、その実現のために、技術的に適合していたのが超薄型モニタとセパレートしたチューナー、というやり方だったんです」

 ともすれば本体を薄くするためにセパレートタイプのテレビにしたと思われがちだが、そうではなく、「レイアウトフリー」という新しいテレビ像を提案していく上でたどり着いたのが、UTシリーズなのだという。

●見てもらえばわかる、今までのテレビとは違う

 こうした新しいコンセプトが強みのテレビだが、それをどう販売戦略につなげていくのか? 「普通の展示はなるべくしたくない」と語る石塚氏が考えた販売戦略は、氏の実体験が下敷きになっている。

 最初は「ただ薄いテレビが出るとだけ聞いていた」という石塚氏。その時点では、特徴や売り方の部分でピンとくるものはなかったようだ。しかし「実際に目にして、これはすごいと私を含め社内の多くの人がショックを受けた」という。百聞は一見にしかず。そのよさをアピールするには、実際に触れてもらうのが一番だと考えた。

 そこでまず、11-12月にかけて東京ミッドタウンで展示イベントを開催した。実際に目にした消費者の反応は上々で、「週末を中心に多くの人に来場してもらい、薄さやデザインが好評」(展示スタッフ)だったという。

 このほか、全日空と共同で、08年3月31日まで全国80か所で広告トラックを使ったプロモーションを展開する。トラック内には、全日空が08年2月から開始するプレミアム座席と、UTシリーズをはじめとした日立製品の体感スペースを設けているという。

 目の前に出して、触ってもらえれば、きっとその違いは伝わるはず……。自信はキャッチコピーにも現れている。

 「すべてのテレビが、嫉妬する。」

 「刺激的なコピーなのは確かです」と石塚氏は苦笑する。「でも、UTシリーズは今までのテレビではできなかった『レイアウトフリー』を実現したんだということを伝えたかった。日立の手がける他モデルも含め、みんなが嫉妬するということですね。ただ単純に薄っぺらくなっただけではないんです」

 そう話す石塚氏は、32V型で23万円前後と決して安くない価格は、あまり問題ではないと考えている。「確かに他社の同サイズの液晶テレビと比べると高い。機能面での○×表でも、他のテレビと一緒。しかし見た目や使い方の自由度は大きく違う。その価値をアピールできれば、価格の壁はなくなると期待しています」

 石塚氏は北京オリンピックが開催される08年が、UTシリーズにとって勝負の年だと考えている。「来年の商戦では、液晶テレビ市場のシェアは今の倍にしたい」と巻き返しを宣言する。

 「今の日立のシェアが少ないといいわれればそれまでですが、要はUTシリーズが今と同じ販売量を上乗せするという意味。それだけ期待しているんです」とUTシリーズの展開に自信を見せた。日立の挑戦はまだ始まったばかりだ
(2007.12.27/BCN)
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by fbitnews2006-6 | 2007-12-27 16:20 | 周辺機器  

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