「ワンセグ」が変えていくテレビの存在意義

携帯電話に牽引され、ワンセグの普及がめざましい。ただ、その普及が「何処でもテレビを見る」という行為の拡大につながるのではなく、テレビへの接し方の変革をもたらす可能性もある。
 移動体受信用としてスタートしたワンセグ放送。確か数年前のCEATEC JAPANあたりでは、受信スタイルとしては昔の小型液晶テレビみたいなイメージで受け止められていたように覚えている。

 だが今ワンセグを牽引しているのは、ケータイである。以前にもアナログテレビ内蔵のケータイは存在したが、電話機の中にデジタルテレビが入ってしまうというインパクトは、限りなく大きかった。

 そして何よりも、ケータイの経済規模の大きさがモノを言った。それが端末の差別化になると分かったとたん、大変な資本投下が行なわれ、あっという間にワンセグユニットを1チップ化してしまった。日本の半導体技術すげえと思うと同時に、ケータイ産業の資本力すげえと思わざるを得ない。

 さて、ケータイでワンセグというのは、まあアリはアリなのだろうが、困るのはバッテリーの持続時間である。常時液晶画面を点灯しているわけだから、調子に乗って視聴していると、今度は肝心なときに電話機として役に立たなくなってしまう。

 しかしその反面、ワンセグは付いてるけど、実際にはそんなに見ないよねー、という意見もあるのではないだろうか。現在のワンセグケータイの売れ行きからすれば、もっと電車の中などでテレビを見ている人を見かけてもいいように思うが、多くの人はメールやケータイゲームで忙しいようだ。

 つまりケータイユーザーにおけるワンセグのあり方とは、特定の番組を注視する従来のテレビから、機能が付いていればそれでいいという、テレビ放送に対する期待度や意識の変遷の象徴ではないかとも思える。



「NW-A910シリーズ」 ケータイの資本力によって破格に小型化したワンセグだが、それを利用した多くのAVメディア複合商品が登場してきている。先週も、ワンセグ機能搭載の新ウォークマン「NW-A910シリーズ」が発表された。

 従来の音楽再生機能にノイズキャンセリング機能が付き、そしてさらにワンセグが付いたわけである。音楽メインではない人がワンセグテレビとして購入する分には、メモリの少ない4Gバイト版でも十分だろう。価格も3万円前後と、小型テレビとしても妥当である。

 ソニーでは今年3月に、ワンセグとアナログFM、AMチューナー付きのポケットテレビ「XDV-100」を発表している。こちらの実売想定価格が4万円前後なので、ラジオはいらないという人には、今度のウォークマンは現実的な選択肢だ。

 そのXDV-100、FMチューナーがデジタルラジオ対応だったらなぁ、という人も多いことだろう。まあFMがデジタルだからどうだということよりも、デジタル放送のラジオはどれぐらい音が違うモノなのか、体験してみたいということだろうと思う。

 デジタルラジオを手軽に体験してみたいという人には、バッファローからワンセグとデジタルラジオに対応した「ちょいテレ」の新モデル、「DH-KONE/U2R」が10月下旬に発売される。もちろんPCが必要なのはしょうがないが、1万3千円程度で試せるというのがメリットだ。これは明日から開幕するCEATECでも展示されるので、足を運んでみるのもいいだろう。

 この「ちょいテレ」を初めとする、USB接続のワンセグ製品は、PCの世界でも売れ筋商品として定着しつつある。PCディスプレイに対しては当然フル画面では表示できないワンセグが、なぜ受けるのか。

 やはりテレビは、情報ソースとして必要としている人が多くいるということが再確認されたという意味がひとつ。そしてもうひとつは、すでにテレビ放送は大きな画面に集中するものではなく、付けっぱなしにしてチラ見しながら情報をすくい取るという存在に変質しつつあるということなのだろう。

非同期視聴と同期視聴

「gigabeat V41」 その一方で、ワンセグをちゃんと見ることにこだわった製品もある。10月19日発売の、東芝「gigabeat V41」だ。電車や室内など受信状態の悪いときに映像がとぎれないよう補完する技術、「トギレナイザー」を搭載した。そもそもgigabeatはHDD内蔵音楽プレーヤーのブランドとしてスタートしたはずだったが、ここまでくるともはや携帯テレビの領域である。価格はオープンプライスだが、直販では2万9800円と、結構安い。

 なんかネーミングのセンスが昭和時代を彷彿とさせるが、本当にテレビで楽しんでいる人というのは、昭和時代からの生活習慣をそのまま踏襲していると言える。筆者にはITとは関係ない友人もいるのだが、そこの家族とスキーに行ったりすると、夜は家族全員でテレビの前に座り、「脳内エステ IQサプリ」のクイズにみんなして参加する「清く正しい家庭の姿」を見たりして、うちの家族のほうがドン引きだったりする。

 ただそのときに感じたのは、だらだらと視聴するというわけではなく、家族でゲームに参加する緊張感のようなものだ。テレビ自体に家族の結束を求めることはできないが、そこまでテレビに対して真剣になれるというのは、ひとつの幸せのカタチなのかもしれない。

 そしてそういう生活習慣の人は、案外時間の切れ目がはっきりしている。この番組が終わったら風呂に入るとか、子供たちは宿題に取りかかるとか、時間のサイクルがテレビによって固定されるからである。

 一方でネットのような時間感覚の希薄なメディアに対して多くの時間を割いている家庭、まあこれはうちのことだが、どうも生活の中での時間の切れ目というのが少ないように思う。したがって毎日の生活スケジュールが常にフレキシブルであり、毎日こなさなければならないタスク、例えば風呂に入るとか洗濯するといったタスクが、夜に向かって押していく。だから必然的に、夜が遅くなる傾向があるのではないかと思われる。

 そう考えていくと、ITがもたらした変革のひとつは、「非同期」であることかもしれない。つまりリアルタイムで処理しなくてもいいという、すべてにおいてのタイムシフトである。例えば電話は、必ず相手をリアルタイムで捕まえて用件を伝える手段であるわけだが、コミュニケーションツールとしてメールが一般化するに従って、用件を処理するタイミングも、非同期になった。

 もちろんテレビの世界も、すでにアナログ時代からレコーダーの発達により、同様のことが起こっているわけだ。さらにそれが持ち出せるようになってから、よりタイムシフトの有用性が発揮されるようになってきたと言える。

 そんな中でありながら、また世の中の人がワンセグというカタチでリアルタイム視聴、すなわち「同期」の世界に戻りつつあるというのは、興味深い現象である。いやそれは非同期から同期へ戻ったわけではなく、ずーっと同期型であった人のためのテクノロジーが出てきただけという、セグメントの問題なのかもしれないのだが。

日本らしさが求められるワンセグ
 ワンセグというのは日本独自のフォーマットなので、視聴できるデバイスも、日本製のものがメインとなる。いくらiPod Touchが人気でも、ワンセグを積むということはまずないだろう。特にAppleは、以前からテレビを電波で受信して視聴するというソリューションに関しては、あまり積極的ではなかった。

 もっともアメリカの場合、テレビ視聴の65%がケーブルテレビ経由で、直接受信は14%ぐらいしかないことも関係しているのかもしれない。つまりケーブルテレビがメインということは、元々各社専用STBがなければ受信できないわけだから、Macでテレビを受信する環境にないということだろう。

 だがそれが故にアメリカでは、番組の販売が早めに軌道に乗ったのかもしれない。もともと放送受信が無料という概念が希薄なことが、お金を払って毎日のテレビ番組を買うというスタイルを生み出しやすかった。

反対に韓国メーカーのPMP(Portable Media Player)は、日本のワンセグに対して積極的にトライしてくる可能性が高い。今手元にCOWON D2をベースにしたワンセグ搭載バージョン「D2TV」の試作機がある。価格は未定だが、この秋発売ということである。


 COWON D2はメモリタイプの小型PMPで、音楽、動画、写真、テキストメモ、FMラジオ、ボイスレコーディング機能を備えている。またFlashも動作するため、Flashアニメーションの再生やタッチスクリーンを使ったゲームなどもプレイ可能だ。

 もともと韓国バージョンのD2には、韓国独自のモバイル放送である「DMB」に対応したモデルがあった。DMBは方式の違いなどから、日本のワンセグよりも受信感度が高く、内蔵アンテナだけで受信できるのだが、日本向けワンセグ機の開発には、受信感度の向上に苦労したようだ。

 ボディ横には、引き延ばせば20センチを超える長いロッドアンテナが格納されている。そのおかげもあってか、受信感度は国産製品と遜色ないレベルとなっている。

 今のところ番組表は表示できず、予約録画機能もないが、放送中の番組をその場で録画することは可能だ。このあたりの使い勝手も、ファームウェアのアップデートで改善されるのかもしれない。

 現在ワンセグなしの4Gバイトモデルが2万9980円、2Gバイトモデルが2万4980円なので、ワンセグ付きモデルがどのような価格設定になるのかは興味があるところだ。国産ワンセグ複合機がほぼ3万円台であることを考えると、2Gバイトモデルでそれぐらいならば、十分競争力はあるだろう。

 iPodの台頭や商習慣の違いから、韓国製PMPは店頭から姿を消しつつあるが、アキバのショップやオンライン販売では強いところを見せている。これは一般層ではなく、かなり「分かった」顧客層に支持されているということだろう。

 それにしてもCOWONが面白いのは、まだメーカーから発表していない試作機を送ってきて、記事にしていいというおおらかさである。市場規模が違うということもあるだろうが、これがAppleだったら発表前の製品が筆者のところに送られてくることはまずないわけで、その文化や商習慣が極端に違うのがおもしろい。

 地デジ対応デジタルテレビで沸く家電業界だが、今後そのターゲットは、都市部から地方部へドーナツ状に広がっていくことになる。一方でワンセグは、都市部と地方部で完全に分離したソリューションになるはずだ。都市部ではケータイや音楽プレーヤーなどと一体化したポータブル複合機として。地方部ではカーナビと一体化した車載受像器として。

 また、テレビに対する接し方によっては、大型テレビを買わずにワンセグで十分とする層も現われるかもしれない。それは携帯電話が固定電話の存在意義を駆逐したことと、似た話かもしれない。(2007.10.1/IT Media)
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by fbitnews2006-6 | 2007-10-01 15:28 | 周辺機器  

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