アイピーモバイル、タイムリミット直前で経営陣にクーデター





 ワイヤレスブロードバンド事業で携帯電話事業への新規参入を計画中のベンチャー企業、アイピーモバイルが迷走している。2年以内の事業化を条件に総務省に付与された事業の開始は11月がタイムリミット。

 残り1カ月と少しとなった9月28日午後。現在の筆頭株主であると見られる森トラストは、現経営陣に対して書面で株主総会開催を請求。代表取締役社長の竹内一斉氏を含む4人の経営陣を解雇し、新たに取締役を選任する予定という。森トラストは代表取締役会長の杉村五男氏の要請に基づき経営陣刷新を計画。杉村氏のみ、経営陣に残る。経営方針を巡って膠着(こうちゃく)状態が続いていた杉村氏と、そのほかの経営陣との溝は埋まらず、森トラスト側の信頼を得た杉村氏が強行策に打って出た形だ。

 同日会見した竹内氏は「事業を立ち上げたいのは、杉村氏もその他の経営陣も同じ。ただ、手法や考え方に相違がある。しかし、こうした形になった以上、速やかにに株主総会の手続きを進め、われわれは退任する」と話した。

 事業化には数百億円に上ると見られる基地局などの設備投資が必要。これまでアイピーモバイルは資金面で協力が得られるパートナーを探してきた。しかし、米通信会社ネクストウェーブ・ワイヤレスと不動産開発を本業とする森トラストの間で株譲渡が繰り返されるなど迷走が続いてきた。救済措置として2007年4月にいったんは発行済み株式の69.23%の株式を引き受けた森トラストは、8月にネクストウェーブに保有株を売却。しかし、事業化困難との判断から買い戻し条項の権利を行使したネクストウェーブは再び9月19日に森トラストにアイピーモバイル株を譲渡している。株式を買い戻した森トラストが免許を返上するのではないかとの噂も流れたが、「森トラストは、今日に至るまでに免許を返上していない。また、杉村氏が事業化にかける思いを知っている。こうして杉村氏の要請を受けて経営陣刷新を申し入れてきた森トラストに撤退の意思があると思えない」(竹内氏)と、現状では、あくまでも事業化実現の方向で動いていきそうだ。「最初から広いカバーエリアでスタートするのは無理かもしれないが、資金面で信頼できるパートナーが現れれば、11月のサービスインも可能だ」(同)。

 近々開催される株主総会の決議を受けて退任することになる4人の現経営陣は「これで事業が前進するなら、それでいい。これで良かったのではないか」(竹内氏)と話しているといい、これまでの当初2006年10月を予定していたサービスインの延長や、長引く経営の混乱による社会的影響の責任は「免許返上ではなく、退任することで果たす」とした。

 杉村氏が中核になると見られる新経営陣の顔ぶれやパートナーとなる企業など、詳しいことは現在不明。「今後新経営体制で進めていくことになればアナウンスがあるのではないか。杉村氏が個人で進めていることで分からない」(竹内氏)。今回の件で杉村氏と現経営陣との間で意思の疎通はなく、杉村氏が会見に同席することもないなど、対立の溝が深かった様子がかいま見える。

 アイピーモバイルはデータ通信に向くTD-CDMA方式を用いた2GHz帯のブロードバンドワイヤレス事業で、総務省から2005年11月に免許を交付されている。
(2007.9.29/@IT)
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by fbitnews2006-6 | 2007-09-29 10:34  

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