次世代スパコン開発が本始動 今後の展望は?




 5年後の2012(平成24)年完成を目指して、日本が国家プロジェクトとして取り組んでいる次世代スーパーコンピューターの開発計画が、本格的に動き出した。目標に掲げた計算速度は1秒間に1京回(京=けい=は10の16乗、兆の1万倍)。現在の世界最速機(米国・ブルージーンL)の約36倍で、「地球シミュレータ」(2002年完成)以来の世界一を目指す。次世代スパコンは私たちの生活に何をもたらすのか。開発の主体となる理化学研究所・次世代スーパーコンピュータ開発実施本部の渡辺卓(ただし)プロジェクトリーダーに、開発の意義と展望を聞いた。(中本哲也)

■1150億円

 国の総合科学技術会議は昨年3月、世界最速を目指す次世代スパコンを「国家基幹技術」に指定した。

 1秒間に1京回の計算能力を目指す次世代スパコンは「10ペタフロップス機」(ペタは10の15乗)とも「京速計算機」とも呼ばれる。建設地は神戸市のポートアイランドに決まり、現在は計画のアウトラインである概念設計を終え、詳細設計がスタートした段階。約1150億円の国費を投じる巨大プロジェクトだ。

 世界トップ級の国産スパコンといえば、海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」が、まだ記憶に新しい。36テラフロップス(1秒間に36兆回の計算能力)という性能は、2002年春から2年半にわたって世界の頂点に君臨した。だが、最新のランキングでは地球シミュレータは世界20位まで後退し、日本製では東京工業大の「TSUBAME」(48テラフロップス)の14位が最高だ。
 地球シミュレータの開発にも携わった渡辺さんは「地球シミュレータの計画段階では、米国側はノーマークだった。今回は計画段階から注目されており、米国との競争は厳しいものになる」と話す。米国もブルージーンの後継機で、京速に並びかける動きを見せている。

■半年で成果

 「完成時に世界最速になれると考えているが、それが私たちの目標ではない。最速のコンピューターを使って何ができるかで真価が問われる」と渡辺さんは強調する。完成から半年程度で、これまでのスパコンでは実現不可能で画期的な成果を挙げるのが目標。そのために、京速の性能を最大限に生かせるソフトウエアの開発を進めている。


 目玉の一つが「生命体統合シミュレーションソフト」の開発だ。私たちの体では、分子、細胞、心臓や肝臓などの組織・器官、全身と階層的に精妙な生命現象が営まれている。生命現象を丸ごとシミュレーションすることは、現在のスパコンでは不可能だが、10ペタフロップスが実現すれば可能になるという。新薬や治療技術の開発など、私たちの生活に直結する成果が期待される。

■オールジャパン

 スーパーコンピューターによる大規模シミュレーションは、理論、実験と並んで現代の科学技術を支える柱だ。京速計算機は生命科学のほか、ナノテクノロジーやバイオサイエンス、自動車や航空機の設計開発、地球や宇宙の成り立ちを探る天文物理など、幅広い分野で新しい世界を拓く可能性を秘めている。

 コンピューターは、膨大なデータを1つずつ処理するスカラー型と、多くのデータを並列処理するベクトル型に大別される。米国のブルージーンはスカラー型、地球シミュレータはベクトル型だ。それぞれに一長一短があり、日本の次世代スパコンは両者を組み合わせたハイブリッド(複合)型になる。

 あらゆる分野をカバーする汎用コンピューターとしては、互いの短所をカバーし、長所を生かせる複合型が有利。理研は世界に先駆けて複合型コンピューターを開発した実績もある。京速スパコンを中心に最高のコンピューターネットワークを構築し、その次の世代でも世界最高水準を目指す構想も描かれている。

 渡辺さんは「次世代スパコンの開発は産官学を巻き込んだオールジャパンのプロジェクト。得意分野を結集して、米国に負けない性能を実現する」と強い意欲をにじませた。
(2007.9.17/産経新聞)
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by fbitnews2006-6 | 2007-09-17 19:35 | PC  

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