絵文字も空気も読めません 10代がハマるSNS「モバゲータウン」を28歳(♀)が探検した


 
 9カ月で200万人を集めた携帯SNS「モバゲータウン」に、mixi中毒の記者が潜入した。そこに広がっていたのは、mixiとも2chとも全く違う新文化。最初はドン引きだった記者もだんだんとハマっていった……



 ネットコミュニティーには強いつもりだった、「mixi」にハマり、「2ちゃんねる」(2ch)を毎日眺める28歳(♀)の記者。「ネットが分からない」と言う上の世代の気持ちが分からなかった。だが携帯向けSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「モバゲータウン」にトライして、その気持ちが痛いほど分かった――

 モバゲータウンは、開始9カ月で200万人のユーザーを集め、10代に圧倒的支持を受けているSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)&ゲームサイト。日記や掲示板の作成、アバター作成、メッセージ送受信、チャットなどといったSNS的な機能のほか、デコメールを無料ダウンロードでき、30種類以上のゲームが無料でプレイできるのが特徴だ。

 mixiよりも速いスピードでユーザーを集めたという点に興味を惹かれ、登録してから約3週間。当初はカルチャーショックの連続で、正直「ドン引き」状態だったが、しばらく経って文化に慣れると、次第に引き込まれていった。最近まで「アバターを着替たい、という気持がまったく理解できない」と思っていた記者だが、今はアバターアイテムをいかに入手するか、知恵を絞っている――

 そんな記者の「モバゲータウン旅行記」を記していこう。

●「私、人気者!?」――入会直後にメールの嵐

 まずは会員登録して入会だ。入会時のナビゲーションやユーザインタフェースは懇切丁寧で、間違えたり困ったりすることがなさそう。「入力作業に疲れた」と思ったころには励ましのメッセージまで表示され、PC向けサービスに多い、無味乾燥で分かりづらい登録フローに慣れた記者にはとても新鮮だ。

 生年月日は一度登録すると2度と変えられない。ユーザー名の変更も1度しかできず、変更の際は1週間は元の名前が表示される。これらの情報はUIMとひも付けられているため、退会して再入会してもデータが引き継がれる仕組み。複数アカウント取得や年齢詐称は、何度も登録し直せるPC向けSNSよりは難しそうだ。

 登録後数時間のうちに、見知らぬ人から次々に「友達申請」ミニメール(モバゲー専用のWebメール)が届いた。相手はすべて男性。メッセージには「よかったら友達になりませんか?」「年上だけどメールしましょう」などと書かれている。おぬしら、見も知らぬ私にいったい何用じゃ……。

 相手によっては「板橋区に住んでる19歳だよ」「休みは平日週1。趣味は映画鑑賞とドライブ」などといきなり自己紹介してきたり「これから末永く盛り上がっちゃおうよ」と初対面なのに妙に慣れ慣れしかったり……。距離感がつかめない。普段、それほどメールをやりとりしない非モテ記者だが、突然モテモテになった気分だ。

 勇気を出して2人に返信してみる。すぐに返事が来る。「どこ住んでるの?」「何してるの?」――会ったこともない人からのいきなりのプライベート質問に、またもやどぎまぎ。どう返すか迷った末、返信をあきらめてしまった。ごめんなさい……。

 しかし、モバゲータウンの“文法”にはくらくらする。記者はメールに絵文字は使わないタイプだが、モバゲータウン内は絵文字の嵐。「ギャル文字」(と呼ぶのだろうか? 母音などが小文字になったり、数字が丸付き数字になるアレだ)も標準で、絵文字もギャル文字も使えない自分が急に恥ずかしくなってくる。

 みんなは一体、このギャル文字(?)でどんなことを話し合っているのだろうか。気になっていくつか日記をのぞいてみた。

●日記には「ヒマ」「絡んで」

 日記の内容は多様だが、体面を気にして書かれがちなブログと違い、特定のテーマについて書こうとか、面白いことを書かなくては、などという気負いは見えない。mixi日記の感覚に比較的近く、誰かに反応してもらうために何かを書く“つぶやきスペース”といった印象。写真や動画を付けることもできる。

 内容は「ヒマ。絡んで(コメントやメールなどで一緒に遊んで)」「きょうは疲れた」「寂しい」などという単なるつぶやきもあれば、「テストが終わったから復帰しました!」「体育のマット運動が楽しかった」などという学生らしい書き込みも。ブログやmixi日記で流行している「バトン」も格好の更新ネタで「ヒマだからバトン回して」という書き込みも。携帯電話を恋人になぞらえて紹介する携帯バトンが特に目に付いた。

 日記はエントリーごとに閲覧数が表示され、コメントも書き込める。試しに記者も簡単な日記を書いてみたところ、2日で7人が閲覧し、2人の男性からコメントが付いた。全く知らない人と気軽に雑談する――絡む――文化は徹底しているようで、寂しい夜の暇つぶしに役立ちそうだ。

●「モバ彼」「モバ彼女」「モバ家族」――バーチャル人間関係

 掲示板付きコミュニティー機能「サークル」も充実している。総サークル数は20万以上だが、開設できるサークルは1人3つまで。つい最近まで1人1つまでだったこともあり、自分が開設したサークルへのユーザーの思い入れは強い。

 サークルの種類は、趣味から友達探し、暇つぶしまでさまざま。情報交換の場でもあるが、どちらかというと、似た境遇の人同士でだべって楽しむという使い方が主流なようだ。多くのサークルに「しりとり」のスレッドがあることも、暇つぶし的な要素が強いことを裏付ける。

 サークルは、バーチャルな人間関係を生成する場でもある。「モバ彼」「モバ彼女」「モバ家族」「モバ学校」――モバゲータウン限定のバーチャルな人間関係が、サークルを通じて作られ、発展していく。

 最も一般的なのはモバ彼・モバ彼女というバーチャル恋人で、メッセージ交換や掲示板・日記のコメントのやりとりだけで「付き合う」ようだ。「モバ彼募集」「モバカノ募集」といった書き込みは、友達募集系サークルでよく見られる。

 モバ彼、モバカノは、バーチャル限定の付き合いが前提だが、募集の際に住んでいる地域を指定したり、「写メ(携帯電話で撮った顔写真の公開)OKの人」という条件を付けるユーザーも多い。相手の素性が見えた方が楽しくコミュニケーションできるためか、バーチャルからリアルへの発展を期待しているのか、狙いはよく分からない。

 モバゲータウンでは、リアルの出会いを目的とした書き込みを禁止している。モバ彼・モバカノも「バーチャルのみの割り切った付き合い」と考えて楽しんでいるユーザーが大半のようだ。ただ「モバゲーで彼氏・彼女に出会った」と公言する書き込みや、「モバで本気で恋しちゃダメ?」などと相談するユーザーもしばしば見られる。

 モバ家族は、ユーザーが父母や姉妹、兄弟、祖父母、ペットなど家族の役割を分担し、家族みんなで仲良くコミュニケーションする、というもの。実際は「姉の部屋」「兄の部屋」などといったスレッドをサークルに立て、役割に関わらず雑談していることが多いようだ。

 モバ学校は、モバ彼・モバ彼女やモバ家族よりもさらに「おままごと的」だ。サークルの参加者を学生に見立てて、学校にある場やシチュエーションを使ってスレッドを立ててコミュニケーションする。サークルにアクセスしたら、出席を取るスレッドに書き込み。「教室」でユーザー同士で雑談。「購買部」は、スレッドを立てたユーザーが「購買部のおばちゃん」となって、商品販売ごっこをする。生徒役が「おにぎり1つ!」と書き込めば、おばちゃん役が「はいよっ! きょうは寒いからウーロン茶付けとくね」とレスする、といった調子だ。

 シチュエーションごとにユーザーが好みの役割を演じる、いわば“おままごとサークル”はさまざまあり、例えば「ホストクラブ」サークルでは、男性ユーザーが掲示板上で女性ユーザーをもてなし、雑談したり悩みを聞いたりする。会話はこんな調子だ。

 「何か飲もうかな?」「じゃあ、カクテル(酒の絵文字挿入)でも行っとく?」「うん。お勧めの(同)は?」「シンデレラなんてどう? パフェもサービスしとくよ」「ありがとう(ハートの絵文字挿入)」「お待たせしました。シンデレラ、お持ちしました」「じゃあ、カンパーイ」――以下、雑談が続き、盛り上がると「店を出」て、ミニメール交換に移ったりするようだ。

 mixiやGREEなどのPC向けSNSは、リアルのつながりをネット上に持ち込むことを目的とした構造になっており、コミュニティーにはオフ会準備用の機能も備わっている。一方、モバゲータウンは完全にバーチャル寄り。オフ会も原則として禁止されており、現実社会の人間関係を忘れられる点もヒットの要因になっているようだ。プロフィール画像にアバターを使っていることも、“現実とは違うバーチャルな自分”を作り出せる要素になっていそうだ。

 サークルでもう1つ気になったのは、「採点」が流行していること。ファッションリーダーのようなユーザーが、アバターや顔写真を「採点するよ」とスレッドを立て、他のユーザーがそこに書き込んだり、自分の顔写真を貼り付けて「採点」を受ける。結構な人気スレッドで、みんな自らの容姿やアバターの採点を受けては一喜一憂するようだ。しかし彼らはなぜ、見た目を赤の他人に採点されたがるのであろうか。分からない……

●Q&Aで「宿題を聞く」学生たち

 「Yahoo!知恵袋」や「教えてgoo」のようなQ&A掲示板「質問広場」もあり、15万近い質問と、それに対する回答が蓄積されている。質問は「音楽」「趣味」「スポーツ」「仕事・アルバイト」などカテゴリーに分かれており、質問数が最も多いのは、「恋愛」カテゴリーだ。

 恋愛では「恋愛は勉強の妨げになるの?」「彼女へのクリスマスプレゼントをどうすればいい?」「失恋からの立ち直り方教えて」といった素朴な質問から「モバ彼に本気で恋をしてしまいました」といった独特の質問、「アニメが好きだと恋愛対象外ですか?」などと聞く自称オタク男性の質問などさまざま。回答者で議論になることもある。

 ちなみに、モバゲータウンの女子ユーザーは、アニメ好きやオタクに対してかなり厳しく、オタクの恋愛相談に対しては「恋愛対象外」「ありえない」などという回答が寄せられる傾向がある。以前、「オタ、キモイ」と書いた女性のブログが炎上した例があったが、ここでは自らが「オタク」と告白した人の方が集中砲火を浴びるという、PCのネット界から見れば逆転現象のようなものが起きているようだ。

 学生メインのコミュニティーらしく、「勉強教えて」というカテゴリーがあるのも特徴だ。「国語」「数学」「英語」など科目別の小カテゴリーがあり、宿題などで分からない問題を教えあっている。

 数学なら「『1次関数の変化の割合』が分からない」などという漠然とした質問から、数式を示して「解き方教えて」と聞くもの、「『青チャート』何ページの何行目の意味が分からない」というものまでレベルも内容も多様。英語なら「これを英訳して・和訳して」という質問が多い。多くの質問に対して、誰かしらが丁寧に答えてあげていることに驚く。

 ただ記者などは「携帯でちまちま問題文を写し、来るかどうか分からない回答を待つ暇があるなら、自分で回答を考えたほうがよっぽど早いのでは」などと考えてしまうのだが、これは旧人類の考え方なのかもしれない。

 2ch文化とモバゲー文化の“交差点”的な質問も見つけた。「厨房にありがちなことって?」という質問に対しての答えが、2種類に分かれたのだ。1つは「『おまえドコ中?』がお約束」「試験直前に焦り出す」など「中学生」にありがちなことを答えるもの。もう1つは「パセリを使いまわす」「まかないがショボい」など、厨房のもともとの意味、キッチンについて書いているものだ。

●ゲーム中にも絵文字チャット

 ゲームはミニゲームやRPGを含めて40種類以上。リアル対戦ゲームも、クイズと大富豪、リバーシの3種類あり、チャットしながらゲームを楽しめる。クイズの“対戦部屋”には朝から晩まで常に100人以上が待っていて、対戦相手に困ることはないが、深夜が一番人が多いようだ。

 対戦に挑戦しようとドキドキしながらクイズにエントリーすると、他のユーザーはチャットで「よろしく(顔の絵文字)」などとあいさつを交わしている。しかし記者は、どこをどういじればチャット画面に文字入力できるのかすら分からずどぎまぎ。「うわ、私いま感じ悪い!?」と不安になりつつ、1人無言でクイズに参加した。

 記者以外の参加者は、クイズの合間にチャットする人も。クイズに答えるスピードも早く、正答率も異様に高い。記者はいっぱしの社会人として、一般常識で高校生(と思しき他の参加者)に負けるとは思っていなかったのだが、参加した2ラウンドとも最下位。他ユーザーは、何度も同じ問題を解いて回答を覚えてしまっているのかも知れない――と邪推してしまう。

 クイズが終了したら、トップの人に「おめ~(絵文字)」とあいさつするのも常識なようだ。チャットの入力法習得に手間取ってタイミングを逸した記者は無言のまま、あわてて部屋を出るのだった……

●携帯に住む“次世代”

 最初は異文化に引きまくり、携帯の小さな画面や、ゆっくりとした通信にイライラしていた記者だが、中を探検しているうちにだんだん慣れ、海外旅行のような気分で異文化を楽しめた。アバターの着せ替えにはハマってきたし、絵文字・ギャル文字なしの書き込みも「浮いてる」と感じるようになり、絵文字や半角カタカナ文字、母音の小文字化をトライ。正しいかどうかはよく分からないが、なんだか若返った気分だ。

 携帯電話は、PCよりも身近で個人的なツールだ。そこで行われているコミュニケーションも、PC向けインターネットよりもずっと身近で親密で本音ベース。モバゲータウンでは、暇なら暇、寂しいなら寂しいと格好付けずに言ってしまえて、だべったりゲームしたりして時間をつぶせる。学生時代のサークルの部室のような印象だ。

 とはいえ、ブログやPC向けSNS同様の「炎上」もいくつか見たし、中傷合戦のような書き込みもある。コミュニケーションが親密なだけに感情的になりやすく、人間関係がこじれやすい性質もあるようだ。また、携帯電話はPCよりも心を開きがち。“出会い系”に悪用される危険もありそうだ。

 運営者側がトラブル防止に注意を払っている姿勢も見える。書き込みやメッセージ送信のたびに「他人が嫌がる書き込みはやめましょう」と注意が出るし、要所要所でルールを丁寧に説明し、認証もひんぱんにかけている。

 PC向けサービスと同様、自浄現象も働いているようだ。明らかな嫌がらせの書き込みには第三者から指摘が入ることもあるし、サークルでは管理者が「ルール」を決めたスレッドを作り、見たユーザーは「あげぇ」などと書き込んでスレッドを「上げ」ていくという文化もある。

 mixiや2chのようなPC向けネットコミュニティーとはまた違った、携帯ならではの新しい文化が、猛スピードで発展し、広がっているようだ。

(2006.11.29/ITmediaニュース)
[PR]

by fbitnews2006-6 | 2006-11-29 13:11 | インターネット総合  

<< 「WWW」の父が語るWeb世界... ドコモやフジなど5社、携帯向け... >>