携帯番号継続制、予想以上の利用者増で通信各社は体力消耗の恐れ

 24日に始まる携帯電話の番号継続制(MNP)の利用者が予想以上に多くなる可能性が、ロイターの行った個人投資家アンケートで明らかになった。同調査で利用意向を示したのは22%。業界内で一般に想定されている数字の約2倍となった。シェアの変動に大きく影響する一方、過度にユーザーが流動化することで販売促進費がふくらみ、各社の利益を圧迫する恐れがある。
 調査はロイターCO.JPの個人投資家向けメールマガジン購読者を対象に、10月10日─13日に実施。1315人(男性92%、女性8%)から回答を得た。年齢層は40歳代から60歳代が65%を占めた。
 日本の携帯電話の契約数は約9400万件。22%がMNPを利用すると、約2000万件がキャリアを変更する計算になる。このうちKDDI<9433.T>のへ変更意向者は45%、ソフトバンクは31%、NTTドコモ<9437.T>は24%。現在のシェアはドコモが56%、KDDIが28%、ソフトバンク<9984.T>モバイルが16%だが、これが各51%、32%、17%に変化する。KDDIの小野寺正社長は20日の中間期決算会見で「MNPは大きなチャンスだと思っている。目標のシェア30%を早期に達成したい」と大きな期待を寄せた。
 <市場から勝利を義務付けられたKDDI>
 ただ、MNP競争での前評判が高いKDDIに対しては「勝って当たり前」というコンセンサスが市場に形成されている。クレディ・スイス証券の早川仁リサーチアナリストはリポートで「MNPにおいて最大の利便享受者となることが株式市場に半ば義務付けられた格好」と指摘。仮に期待されているような結果を残せない場合、大きな失望感が広がる可能性がある。
 ロイターの調査で「予想外」の好結果となったのがソフトバンク。端末のラインナップが他社に比べて見劣りするなど、ボーダフォン時代の負の遺産を引きずり、MNPではKDDIとドコモの草刈場になるとみられていた。だが9月末に発表した秋冬モデル13機種は、周囲の期待を上回る充実ぶりだった。ある競合の関係者は「よくあれだけの短期間でそろえたものだ」と感心する。ボーダフォン時代は隅においやられていた家電量販店での売り場も、最近は大きく拡充した。携帯電話端末の販売代理店関係者は「孫(正義社長)さんは昔から、大手量販店の社長たちからかわいがられているから」と明かす。
 逆にドコモは、予想以上に低い数字にとどまった。同社の秋冬向け端末の発表が、この調査が行われている期間内だったため、新モデルのラインナップが認知されていなかったことが影響した可能性はある。ゴールドマン・サックス証券の安藤義夫アナリストは、新端末についてリポートで「予想以上に強力であることを印象付けた」と指摘している。それでもドコモのある関係者は「うちは相変わらず横綱相撲を取っているような雰囲気がある」として危機感を募らせる。
 <注目すべきはシェアより各社の利益>
 MNPの利用意向22%という数字は、業界内で一般的に予測されている10%前後に比べて約2倍。シェアの変動幅が広がる一方で、各社の体力を消耗させるおそれがある。KDDIの小野寺社長は決算会見で「私たちの想定している以上にユーザーが動くと、(販売奨励金が増加して)短期的に利益面に悪い影響を与える」と語っている。同社が中間決算で通期計画に対する営業利益の進ちょく率が7割を超えたにもかかわらず、通期見通しを上方修正しなかったのは、予想以上にMNPの利用者が増えることを懸念しているためだ。
 日本では携帯事業者が販売店に奨励金を支払い、店側はそれを原資に端末を値引き販売する。実際には7万円のワンセグ対応機が2万円程度で購入できるのはそのためだ。MNPの利用者が増えると奨励金がふくらみ、事業者の営業利益を圧迫する。
 すでにMNPが導入された韓国や台湾では、顧客獲得合戦が激化。販売促進費が増加し、通信各社の利益を圧迫している。カリヨン証券CLSAのシニアアナリスト、キラーン・カルダー氏はリポートで「(MNPで)注視すべきはシェアではなく利益」と指摘する。
 <事前予約の状況は「静かな船出」>
 利用意向者22%のうち、実際にどのぐらいが事業者を変更するかはフタを開けてみないとわからない。携帯電話3社は9月上旬からMNPの事前予約受付を開始しているが、NTTドコモの中村維夫社長は9月の定例会見で「今のところ静かな船出」と語っている。ソフトバンクの孫社長も9月末の端末発表会で、それほど目立った動きはないと述べている。KDDIの小野寺社長は20日の会見で「これまでのところ想定内」としたうえで、予約状況の具体的な数字については「勘弁してほしい」とするにとどまった。
 メールアドレスや料金の長期割引サービスを移行できないこと、MNPの手数料に約5000円がかかること、解約する事業者から違約金を徴収される場合があることなどが、大きなハードルとみられている。なかでもユーザーは料金に最もシビアで、今回の調査でも携帯電話事業者を選択するポイント第一位は「料金」となっている。
 各社とも、今のところ長期割引サービスを引き継ぐなどの料金施策を打ち出す様子はない。最も可能性があるのは、低価格戦略でADSL(非対称デジタル加入者線)事業を成功させたソフトバンク。しかし孫社長は記者会見のたびに「ソフトバンクは大人になった」とし、料金競争を仕掛けるつもりはないとの考えを示している。
(2006.10.23/ロイター)
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by fbitnews2006-6 | 2006-10-23 19:23 | 周辺機器  

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