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根強い人気の35mmフルサイズ、デジタルは銀塩を超えたのか?

デジタル一眼レフの世界に昨年10月、衝撃的なカメラが登場した。キヤノンの「EOS 5D」だ。何が衝撃的かというと、35mmフルサイズの撮像素子を搭載しながら、実勢価格価格で30万円台の「安さ」を実現した点。これまで、プロ御用達のフルサイズ機はあったがとても高価で、趣味で撮るカメラマンにとってはちょっと手が出ない存在だった。それが、一気に身近になったのだ。その実力や如何に? 「EOS 5D」を実際に使って、写りや使い勝手を検証してみた。



●35mmフルサイズの撮像素子は、表現力がまるで違う

 安くなったとはいえ、カメラ本体だけで30万円台といえば、デジタル一眼レフといえどもかなり高価なカメラだ。それでも、発売以降、カラーバリエーションを合算した「BCNランキング」のデジタル一眼レフ機種別販売台数シェアでは、「EOS 5D」は常にベスト10圏内をキープし続けている。

 人気の秘密「35mmフルサイズ撮像素子」とは、撮像素子の大きさが35mmフィルムの1コマとほぼ同じ大きさ(35.8×23.9mm)であることを指す。「EOS 5D」の最大の特徴は、撮像素子に、この35mmフルサイズのCMOSセンサーを搭載していることだ。一方、その他ほとんどのデジタル一眼レフは、35mmフィルムサイズよりひとまわり小さいAPS-Cサイズ(23.4×16.7mm)相当の撮像素子を使っている。

 こうした撮像素子のサイズの違いは、まず、レンズ焦点距離やボケ味の違いに影響してくる。撮像素子が35mmフィルムと同サイズだと、交換レンズを35mmフィルムカメラとまったく同じ感覚で使うことができる。つまり、焦点距離どおりの画角と被写界深度・ボケ味で撮影ができるのだ。それに対して、例えばAPS-Cサイズに近いDXフォーマット(23.7×15.7mm)の撮像素子を搭載するニコンのデジタル一眼レフでは、撮像素子が小さいため、35mmフィルムの一眼レフカメラと同じレンズが使えるとはいえ、得られる画像はやや異なってくる。

 例えばレンズの焦点距離は、約1.5倍相当となる。つまり、50mmの標準レンズを使っても、実際には焦点距離75mmの中望遠レンズになってしまうわけだ。そのくせ被写界深度は50mmのまま。フィルムカメラに慣れた者ほど、このちぐはぐさに悩むことになる。また、焦点距離が1.5倍されるため、超広角撮影には不利。20mmレンズを付けても焦点距離は30mmになってしまう。撮像素子が35mmフルサイズということは、こうした悩みから解放されるのことを意味する。

 それだけではない。35mmフルサイズの撮像素子は1画素当たりの受光面積も大きくなるため、ダイナミックレンジの広い、より階調豊かな表現が可能になる。一般に、デジカメで撮った画像は、シャドー部の表現力はフィルムに匹敵するが、ハイライト部は簡単に白飛びしやすい、といわれる。フィルムほどラチチュード(明暗差の許容量)が広くないのである。撮像素子のサイズが大きくなってダイナミックレンジが広がると、白飛びや黒つぶれ、偽色など、デジタル特有の現象も軽減されるのである。そのためか、「EOS 5D」の画質は評価が高く、もはや銀塩フィルムの表現力を超えている、とさえいわれている。

●高画質でありながら、操作性もまったく不満なしの「EOS 5D」

 実際に「EOS 5D」で撮影した画像を見てみると、確かに色彩のトーンは驚くほど豊かで滑らか。文字どおり銀塩フィルムに負けない表現力で、正直、これには脱帽である。色の乗り方も申し分なく、深く沈んだ色合いから、鮮やかな透明感まで、余すところなく描き出す。ハイライト部も、ぎりぎりまで階調を失っていない。ここまで撮れれば、もうフィルムカメラに固執する必要はないだろう、と思ってしまった。

 また、操作面でも熟成が進んでいて、ややクセのあるキヤノンのプロ用機「EOS-1D」シリーズとは一線を画し、初めてキヤノンのデジタル一眼レフを手にしたユーザーでも、すぐに使いこなすことができる感じだ。背面の「サブ電子ダイヤル」を回転させて項目選択などを行い、その中央に配置された「設定ボタン」で決定する操作は、的確に項目選択や項目間の移動ができる。他社のデジカメに多い十字キーによる操作よりも、むしろ確実でわかりやすい。十字キー的な操作が必要な場合には、別に「マルチコントローラー」が用意されているので、ダイヤルとコントローラーで使い分けができるところもいい。

 さらに、カスタム設定で自分なりに使いやすい操作方法に変更することもできる。例えば、9点のAF測距点から任意の1点を選択する操作は、デフォルトでは、まず「AFフレーム選択ボタン」を押してから、「サブ電子ダイヤル」または「マルチコントローラー」で測距点を選択する、という手順なのだが、筆者の場合は、カスタム設定で、ボタンを押さずに「マルチコントローラー」でダイレクトに測距点が選択できるように変更して使っていた。スピーディーに操作できて、使い勝手はすこぶる良好だった。もちろん、従来のEOSユーザーであれば、「EOS 5D」も何の違和感もなく操作できてしまうことだろう。

 「EOS 5D」の画質にはまったく不満はないが、ただ、35mmフルサイズCMOSセンサーは、レンズ性能に対する要求がシビアなようだ。安価なレンズだと画面の四隅で、光量不足や解像力不足が露呈してしまう。今回試用したレンズは普及価格帯の標準ズームレンズ「EF28-105mm F4-5.6USM」だったが、周辺部では明らかに光量不足や画像の流れが見られた。「EOS 5D」の撮影では、レンズもある程度レベルの高いものを用意する必要がありそうだ。キヤノンの交換レンズEFシリーズの中でも、とくに高画質レンズであることを示す、レンズ鏡胴部に赤いラインが入った「Lタイプ」が、「EOS 5D」にはぴったりだと思う。

●ハイアマチュアならきっとほしくなる35mmフルサイズのデジ一眼

 白状すると、筆者はふだんニコンのデジタル一眼レフを使用している。その筆者でさえ、「EOS 5D」の画質には脱帽させられた。各種操作も、すぐになじむことができた。実際、真剣に「EOS 5D」への乗り換えを考えたほどである。ただ惜しむらくは、撮像画像のすばらしさに比べると、手に持った感触やシャッター音など、カメラ本来の質感がどうしても見劣りするように感じてしまう点だ。あくまで個人的な印象だが、価格相応の「所有する喜び」が感じられないのが残念でならない。

 35mmフルサイズ撮像素子を搭載したデジタル一眼レフとしては、すでにキヤノン「EOS-1Ds Mark II」がプロの撮影現場などでもかなり使われている。しかし、市場実売価格で80万円以上もする超高級機。そのうえプロを対象としたカメラなので、さまざまな撮影目的・条件に合わせて使えるよう操作系も独特で複雑だ。誰もが簡単に扱えるカメラではない。そこへ登場したのが、「EOS 5D」だった。35mmフルサイズ撮像素子搭載のデジタル一眼レフが30万円台で手に入るというというのは、やはり衝撃的な出来事だったのだ。写真作品に、より高い表現力を望むデジタル一眼レフユーザー、銀塩フィルムカメラからデジタルへの移行を検討しているハイアマチュアなら「EOS 5D」はかなり有力な選択肢といえるだろう。


(200.6/BCN)

by fbitnews2006-6 | 2006-09-06 15:22 | インターネット総合  

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