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ソニーの独走にキヤノンが「待った」、加熱するハイビジョンビデオカメラ



 デジタルビデオカメラ市場のハイビジョン(HD)化に拍車がかかりそうだ。8月2日、キヤノンは1920×1080画素のフルHDに対応した製品「iVIS HV10」を発表。家庭用のHDビデオカメラ市場への参入を明らかにした。一方、3月に発売したHDデジタルビデオカメラ「HDR-HC3」が22週連続トップを走るソニーも、9月に新機種を投入。HDのラインアップをさらに強化する。このほか、日立や松下も投入の準備を進めていると見られ、今年の秋の商戦以降、HD対応機がホットになりそうだ。そこで、「BCNランキング」でデジタルビデオカメラのHD化の現状をまとめた。
●ソニー、年末にはビデオカメラの5割をHD対応へ

 家庭用のデジタルビデオカメラ市場でHD化に火をつけたのはソニー。05年7月、実売10万円台後半の家庭用HDビデオカメラ「HDR-HC1」を発売したのがきっかけだ。発売直後から売れ行きは好調。「BCNランキング」の週次データを見ると、カラーバリエーションを合算した機種別ランキングで、トップ10圏内を連続38週も維持した。デジタルビデオカメラ市場では平均価格が8万円前後ということを考えると、その倍以上もする製品としては大健闘だといえる。06年2月の第3週では僅差ながら販売台数シェア10.6%でランキング1位を獲得。1位はこの1週だけだったが、2位12週、3位13週と、HDへの期待の高さを物語った。

 そして、ビデオカメラのHD化の流れを決定付けたのは3月に発売した後継機の「HDR-HC3」だ。価格を10万円台中ごろに引き下げた上、23%も小型化したのが支持され、機種別ランキングで発売以来22週連続トップを走り続ける。今や一番の売れ筋だ。直近の7月第5週(7月24日-30日)では、販売台数シェア12.1%で22週目の1位を記録した。

 ソニーでは、さらにラインアップ強化を図る。記録メディアに8cm DVDを採用した「HDR-UX1」を9月10日に、30GB HDDを搭載した「HDR-SR1」を10月10日に発売する予定だ。7月に開いた発表会の席上、ソニーEVPデジタルイメージング事業本部長の中川裕執行役は、「年末にはビデオカメラビジネスにおけるHD映像を撮影できるモデルの構成比50%を目指していく」と宣言するなど、HD化の手を休める気配はない。

 もともと、デジタルビデオカメラ市場では、ソニーが40%前後の販売台数シェアでトップ。ビクター、松下、キヤノンが追いかけているという構図だ。HD化はトップメーカー主導の「仕掛け」だけに、影響は大きい。デジタルビデオカメラ全体でのHD化率を金額ベースで見ると、この3月には30%を超えた。以後若干率は下がっているが、トレンドとしては右肩上がりで推移している。秋の新モデルの投入で、この傾向にさらに加速がつくことは間違いないだろう。

●フルHDを引っさげて追随するキヤノン、そのほかの競合他社は?

 こうしたソニー独走に、新ブランド「iVIS(アイビス)」を立ち上げて「待った」をかけるのがキヤノン。1920×1080画素のフルHDデジタルビデオカメラ「iVIS HV10」を第1弾に、家庭用HDビデオカメラ市場に本格参入する。発売は9月上旬で実勢価格は15万円前後の見込み。ソニーのHC3と同価格帯ながら、フルHD対応の強みをアピールして勝負に出る。キヤノンマーケティングジャパンでは「動画のキヤノンの橋頭堡」(芦澤光二専務取締役)と位置づけており、「ゆくゆくは必ずHDの時代となる。その中で、新ブランドと新技術で飛躍し、静止画も動画も強いキヤノンを目指す」(同)としている。

 また、日立製作所は8月2日、HDDとDVD双方に対応する「ハイブリッドカムWoo DZ-HS303」を発売すると発表した。HD対応製品ではなかったが、発表会の席上、荻本教夫・日立製作所ユビキタスプラットフォームグループ製品開発事業部副事業部長は、「ハイビジョンのビデオカメラが売れているからといって、すぐに追従して製品を出す時代ではない」としながらも、「ハイビジョンは日立でも一番訴求したい付加価値」とし、「ユーザーが満足できる性能や仕様は何かを考えてHD対応ビデオカメラの開発を行っている」とコメント。HD機種を開発中であることを明らかにした。

 このほか、プロ用のHDビデオカメラを擁する松下電器産業でも、家庭用のHDビデオカメラ参入は近いと見てよさそうだ。同社では「具体的にまだ何もいえない」(広報)としならも「しかし準備はしている」(同)として、開発中であることを明らかにした。

●一気進むか? デジタルビデオカメラのHD化

 HD映像を撮影できる民生用ビデオカメラが最初に発売されたのは03年。日本ビクターの「GR-HD1」が最初の製品だった。価格は実売で40万円前後と、かなり高額。その後04年10月には、ソニーが「HDR-FX1」を発売したが、これも実売30万円台。家庭用ビデオカメラのメインユーザーである家庭向けというよりは、マニアユーザー向けの製品だった。そして05年7月のソニーの「HDR-HC1」、今年3月の「HDR-HC3」につながっていく。

 「HDR-HC1」の発売当初、ソニーでは、「最初はマニアの注目を浴びて売れ行きは伸びるだろうが、一般ユーザーまで普及していくのには時間がかかるだろう」と考えていたという。また、「HD映像で撮影しても、HD映像を映し出すことができるテレビもまだ完全に普及していない。HC1の発売から当面は啓蒙の時期になる」と見ていた。

 しかし、こうした予想に反し、HDデジタルビデオカメラは大当たりしている。撮影した映像を映すテレビ側の環境も大きく変化してきた。11年にデジタル放送が開始することを受けて、デジタルハイビジョン放送を受信できるテレビも増加。価格の下落も急だ。テレビでHD映像が当たり前になれば、ビデオカメラ側もHD対応のもの、となるのは自然な流れ。こうなると、ビデオカメラでも「HDが当たり前」の時代は、意外に早く訪れるのかも知れない


(2006.8.3/BCN)

by fbitnews2006-6 | 2006-08-03 12:10 | 周辺機器  

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